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【仮説1】その2 社長命令によりシンクロトロンを一ヶ月間連続稼動させるという憂き目にあった長門は、泊り込んで運転を監視することになった。大学の研究室のほうも忙しいだろうにご苦労だ。嫁入り前の女の子をひとりで宿直させるのもあれなので俺も付き合うことにした。 俺は一度自宅に帰り、晩飯の弁当と毛布、シュラフを抱えて戻ってきた。まさか会社に泊まることになるとはな。 「長門、寝袋を調達してきたぞ。軍用の折りたたみベットでもありゃいいんだが。ハルヒに言ってソファを買わせよう」 「……」 長門と二人きりで夜更かしするのははじめてかもしれない。コントロールルームにはテレビもなく、時間を潰すには監視用のパソコンで動画共有サービスを見るとかウェブサイトを回ってみるくらいしかすることがなかった。長門は椅子に座って静かに小説を読んでいた。 「コーヒー飲むか」 「……」 長門はコクリとうなずいた。 二人は付き合っていながら異様に会話が少ないと思われがちだが、俺はこの無言のコミュニケーションを楽しんでいる。言葉にしなくても気持ちのどこかが通じているというか。なんというのか、一億と二千年の昔から付き合っているような、そんな感覚にとらわれる。長門の言う、言語では概念を表現できないなにかの繋がりが二人にはあるのかもしれない。 俺は真新しいカーペットの上にごろりと横になって、隣の部屋から聞こえてくるシュンシュンという音を、そのへんに鉄瓶をかけた火鉢があるような妄想と入り乱れさせながらぼんやりと過ごしていた。 「なあ長門」 「……なに」 「いつか二人で旅行にでも行くか」 「……そう」 「どこか行きたいところはあるか」 長門は少しだけ考えて、 「……雪国」 「雪か。じゃあ東北だな。来月の連休に温泉にでも行くか」 「……」 コクリとうなずいた。車で行くか飛行機で行くか、あるいはまったりと列車で行くか、などと考えていると長門が口を開いた。 「……ひとつ、質問がある」 「なんだ?」 「……わたしたちのこと」 「俺たちの何だ?」 「……わたしたちは今、特別な関係にある」 「特別っていうと、付き合ってる関係のこと?」 「……そう」 「それがどうかしたか」 「……あなたは、なぜわたしの家に泊まらない」 かなりギクリとした。長門が正面からこういう質問をぶつけてくることは予想していなかった。 確かに男と女が付き合ってれば互いの家に泊まったりもする。だが俺たちはふつうのカップルとは違う。俺は人間で、こいつはヒューマノイドインターフェイスだ。 「それはだな、ええと、」 納得のいく答えを探していると長門は遮った。 「……わたしが、人間ではないから」 「うーん……」 俺はどう説明すればいいのか分からず、言葉に詰まった。確かにそうなんだが、でも俺の思ってる意味は、長門が人じゃないから区別しているというのとはちょっと違う。 「いや、そうじゃないんだ」 「……では、なぜ」 俺がなぜ二人の関係を進めることを躊躇しているのか、正直なところ、それは一度長門にキスをしたときの衝撃に要因があるのかもしれない。あのとき長門は体を痙攣させて硬直してしまうという、人だったら心臓発作で死んでたかもしれないアクシデントに見舞われた。急遽喜緑さんを呼んで助けてもらったのだが、愕然と目を見開いて動かない長門の表情が今も目に焼き付いている。長門にしたら、あのときの恍惚は気持ちよかったというのだが、いやはや。 「お前にこういう説明をするのも無粋かもしれんが。俺はこれでも健康な男子で、二人がいっしょにいたらどういう流れになるかは分かってるつもりだし、でもそうなってしまうのはまだ早いと思うんだ」 「……なぜ」 「ええとだな、これはたとえばの話だけど。俺がおふくろから形見に指輪をもらったとする。売ってしまえばただの安い石だが、好きな女に婚約指輪として贈れば最高の品だろ。簡単に金に替えてしまうより、ここぞというときにプレゼントすればかけがえのない価値を持つ」 「……」 「例えが飛躍しすぎてるかな」 「……いい。言っている意味は分かる」 「簡単にそういう付き合いになることもできるが、待っているだけの価値はあると思うんだ」 「……分かった」 これは昔なにかのエッセイで読んだ話なんだが、ここで役に立つとは思わなかった。繊細な部分のある長門を傷つけたくないという気持ちも、二人の関係を大事にしたいという気持ちも、半々はあったのだが。長門は納得したらしくうなずいた。 長門は寝袋を俺の隣に広げ、そこにうつ伏せて読み止しの小説を開いた。長門の体温が俺の右半身に伝わってきた。こういう距離感は今までになかった気がするな。そのまま気持ちよくうとうととしていると、研究室のドアがバンと開いた。 「あんたたち、こんなところでなにイチャついてんのよ」 ハルヒがニヤニヤしながら俺たちを指差した。その後ろで古泉がコンビニの袋を下げている。朝比奈さんがいないところをみると未来の自宅に帰ったのか。 「夜勤するならひとこと言いなさいよ。あたしはこういうの好きなんだから」 お前が好きってのは部室とか職場に泊まりこんで夜更かしすることだろう。まあ分からんでもないが。 「お邪魔でしたか」 「いや、ちょうど退屈してたとこだ」 俺は差し入れのビールを袋から取り出した。 「さあなにがいい?トランプも花札もUNOもあるわ。なんなら麻雀でも」 四人で酒を煽りながら、結局明け方まで騒いでいた。ハルヒも座布団の上の花札をめくりながらうとうとしつつ、ちょっと寝ると言ってそのまま倒れこんだ。古泉が心得た仕草で自分の上着をかけてやり、散らばった菓子袋を片付けてから自分も横になった。俺も寝袋に潜り込む。シンクロトロンを冷やすシュンシュンという音だけが静かに聞こえてくる。 意識から眠りへの曖昧な領域に落ちようとしたとき、長門がごそごそと俺の寝袋に潜り込んできた。あのー、長門さんなにをしてらっしゃるのでしょうか。靴を脱いで寝袋に足を差し込んできた。俺は酒臭い息を長門に吹きかけないように、あごの下に長門の頭を入れてやり背中に腕を回した。俺は酔ってるんだ、酔ってるんだからな。 「あんたたち、いくら仲がいいからって職場でそんなことしちゃだめよ」 「うわっつつ、お前起きてたのかよ」 眠っていたはずのハルヒが腕枕をしたまま俺たちを眺めている。ニヤニヤ度満載である。長門は俺のシャツにしがみついて顔を真っ赤にしていた。 「独身女性の前なんだからね、有希も場所をわきまえなさい」 長門は今にも燃え出しそうなくらいに顔を紅く染めてコクリとうなずいた。うなずいたが離れようとしないので俺はそのまま抱いて眠った。 昼頃目を覚ますと長門はそのままの形で眠っていたが、特に気もせずそのまままた眠りに落ちた。今日が土曜日でよかった。 しかしまあ、これを毎日やるわけにもいかんので、全員が当番制で監視することにしよう。開発部の連中にも守秘義務を契らせて当直させるか。そうすると十日に一回で済むな。 それから一ヶ月してワームホールは完成した。以前に作った五分のやつは消滅した。内部のエキゾチック物質とやらは限りある資源らしく、取り出して再利用したらしい。 長門は夜勤明けで一度マンションに戻って夕方出社、今日はハカセくんもまだ来ていない。ハルヒはまた手紙を書いて送ろうとしていた。 「まだ過去には送れないからな。気をつけろよ」 「分かってるわよ。未来に送るのよ」 ハルヒはまた防護服を着て実験室に入っていった。 ワームホールの波打つ鏡に封筒を差し込もうとしたそのとき、大量の紙くずが流れ出た。ハルヒは紙の濁流に流されて溺れ、俺はなにごとかとカメラ映像を見つめていた。こいつは一大事だ。俺は防護服も着ずに実験室に飛び込みハルヒの名前を呼んだ。 「おい!どこだ」 「ここよここ」 紙くずの海の中からハルヒの手が伸びてきた。俺はその手を引っ張り、海をかき分けかき分けコントロールルームに引いていった。紙くずと思っていたのはすべて手紙だった。 「なんなのよこれは!」 ハルヒはヘルメットをがばと脱ぎ捨て、モニタの映像を睨んだ。手紙の雪崩れはまだ続いている。 俺は受話器を取り上げた。 「もしもし、長門か。寝てるところすまん、緊急事態だ」 「……なにがあった」 「ワームホールから手紙があふれてきた」 「……どっちの側から」 「未来からだ」 「……すぐ行く」 俺は防護服を着なおし、手紙を一通手に取った。誰だか知らないが、ちゃんと宛名も住所も書いてある。これどうしろっていうんだろ。未来から来たってことはつまり、過去宛ての郵便転送サービスをはじめたのか。たった一ヶ月で? 手紙の山がワームホールの反対側、過去の側へ流出しようとしていたので、俺は埋もれそうになりながらダンボール箱とガムテープで塞いだ。十分くらいして雪崩れがようやく終わり、実験室は手紙の山と化した。 「急いで片付けないとこれ、引火でもしたらたいへんだぞ」 「とにかく、ダンボール箱に全部詰め込んでちょうだい」 「うわ、なんですかこれ」 古泉が出社した。猫の手も借りたい緊急時に即現れるとは、上出来だ。 「未来から送られてきたんだ。ともかく片付けるの手伝ってくれ」 古泉は新しい防護服をロッカーから取り出し、しゅこしゅこ呼吸音をさせながら手紙を集めた。 最後に一枚だけ、ワームホールからぽとりと手紙が落ちた。それを拾い上げてみると、見覚えのある字で宛名が書かれている。 「おーいハルヒ、お前宛だ」 「この忙しいときに。いったい誰よ」 「お前からだ」 「え?」 ── 株式会社SOS団御中 十分な運用の稼動が見込まれたので時間郵便転送サービスを開始しました。 「何考えてんのよあたしったら!」 「まったくだ」 そのセリフを七年間言いたかった俺の気持ちを分かってほしいね。 「“顧客の手紙を送るので丁寧に扱ってね。切手代はそっちで負担してちょうだい”。勝手なこと言ってんじゃないわよ」 ハルヒは自分の手紙を投げ捨てた。それを書いたのはお前自身だぞ。 「涼宮さん、これは投資と考えましょう。この事業がうまくいけば億単位で利益になりますよ」 「そ、そうね。さすがあたしだわ、先見の明があるわ」 どうでもいいよ、その先見とやらは。しょうがない、郵便局に電話して引取りにきてもらおう。切手代は料金別納だか後納だかでまとめて出せば少しは安くなるだろう。 ハルヒはなにを思い立ったか、A4コピー用紙に太マジックでなにごとか殴り書きして、クシャクシャに丸めてワームホールに投げ込んだ。 「未来にゴミ送ってどうするんだ」 「経費を請求するのよ。あたしがタダでやるとでも思ってんの?」 あ、これはなんだかまずい展開になりそうな予感がするぞ。 「まあ、いったいこれはなに?」 朝比奈さんが目を丸くしている。 「あ、おはようございます。未来のハルヒが送ってきたんです。全部郵便局に持っていかないといけません」 「誰に送るの?」 「さあ。時間郵便サービスをはじめたんらしいんです」 朝比奈さんは笑顔のまま青ざめていた。 「……紙の、海」 「おう、寝てるところ呼び出してすまんな。手伝ってくれ」 眠いはずの長門も出社して手紙を整理し始めた。明日は休ませよう。 「あれ、これなんだろ」 ショベルカーがあればと思えるような手紙の山を掘り返してようやく床が見えてきたところで、ワームホールの前に落ちている一枚の写真らしきものを拾った。俺とスタッフ全員が映っている。うわ、老けてるな。そこに映っている長門と朝比奈さん以外の全員が中年男女っぽい姿をしていた。俺たち、こんなになっちまうのか。プッ、古泉が髭生やしてるぞ。 「なになに、見せなさい」 俺がクスクス笑いをしているとハルヒが手を出した。 「おい待てよ、まだ見てんだろ」 写真を奪い取ったハルヒは自分の未来の姿を見てショックを受けたようだった。 「きゃーなにこれ。あたしってこんな小じわができてんの。今日から美顔しなくちゃ」 ハルヒは突然ほっぺたをマッサージしはじめた。老化ってのは生物共通の自然現象なんだから、そんなインスタントでやっても意味ないだろうに。 「は?なにこれ十年先じゃない」 写真の右下の日付が、確かに十年後になっている。 「あたしたちのワームホールの出口って一ヶ月先よね。なんで十年後の写真があるわけ?」 「未来のお前の冗談だろ」 そんな誰が笑うともしれない冗談をハルヒがやるとも思えないが、別に一年後も十年後もたいした違いはあるまい。俺は長門に尋ねる視線をやった。 「……?」 長門にも分からないようだ。たぶんハルヒに言われて俺がパソコンで合成して作った写真なんだろ。手の混んだジョークだ。 「そんなことよりさっさと郵便局に持っていこうぜ」 「うーん……」 ハルヒはなんだか腑に落ちないようで、写真を睨んで唸っていた。 「ひらめいたわ!」 こんな朝から疲れる日には聞きたくないハルヒの号砲である。 「なんなんだよ。もう金使う話はなしだぜ」 「ちがうわよ。あの写真の意味、あたしへのクイズだったのよ」 「なんだそのクイズって」 「一ヵ月先のワームホールしかないはずなのに、なぜ十年先の写真が送られてきたのか?その答えは」 俺は二十秒くらい考えて、時間論が苦手なのを思い出しただけでやめた。 「その答えは?」 「ワームホールをいくつも作って繋いだのよ!」 まじですか。長門さん、これってまじですか? 「……天才」 「俺にも分かるように説明し、」 「だから言ってるでしょ、時間差一ヶ月のワームホールを十二個作って一年のワームホールを作る、それを十セットで十年よ」 「いくら作っても時間差は同じだろう」 「そうじゃないのよ。別々の二つの穴のAとBを繋いだら、その時間差の分だけワームホールができるわ。時間差十年のワームホールを一度に作るより、一年のものを十年かけて十回作ったほうが間と間でやり取りができるでしょ。完成した部分から使えるわ」 なるほど、そういうことか。ハルヒにしちゃ分かりやすい説明だ。 「あんたの頭が三次元構造なだけよ」 悪かったな、二次元じゃないだけマシだ。 社長の鶴の一声で、この時代のハルヒのひらめきなのか、未来のハルヒのひらめきなのか、出処がよく分からんこのアイデアが採用されることになった。ということは十年未来から送るのに、手紙を各年宛てに分類してるってことだな。まるで郵便局じゃないか。出しそこなって机の中で眠ってる年賀状とか、躊躇しているうちに数年経ってしまったラブレターとかも送れるぞ。 長門の指導で、できるだけ実験室に入らないで済むようにと、ワームホールの前に小型のベルトコンベアを置いて直接箱に溜まるようにした。それからの俺たちは箱詰めの手紙を郵便局にせっせと運ぶはめになった。送料だけでもかなりの額になったが、運ぶのに軽四のワゴンを長期リースしてさらにバイトを雇ったりしたので人件費もかさんできた。やれやれ、時間移動技術は先行投資がハンパじゃないぜ。 未来のハルヒが一通あたりどれくらいの手数料を回収しているかは知らないが、これでまあなんとか収益の見込みは立ったな。などと安堵の溜息を漏らしている俺だったが、ハルヒの考えていることはさらに奇矯だった。ハルヒがマジックで殴り書きしたA4用紙がなんだったのか、あのとき知っておくべきだった。 「ちょっとキョン、あんた株の取引やったことある?」 「ねえよ。そんな金あったら遊ぶさ」 株式がどういう仕組みなのかは知っている。うちも株式会社のはしくれだからな。とはいっても株式の譲渡に制限がある会社で、しかも株主は事実上鶴屋さんだけだ。市場に上場もしてない。 「古泉くんは?」 「市場の知識なら多少は心得がありますが」 「ちょっと教えてちょうだい。その、オンライントレードってやつ」 「かしこまりました」 古泉は俺に向かってウインクした。おおかた機関の財テクでも聞きかじったんだろ。あいつらの運営は相当に金がかかるだろうからな。 俺は古泉を呼び出した。このビルに体育館の裏があったらそこでもいいが、ハルヒに気付かれない手近な場所といえば男子トイレくらいしかなかった。 「おい、あんまりハルヒをそそのかすな。今は時間郵送サービスで猫のしっぽも借りたい状態なんだから」 「僕はそそのかしてなどいません。涼宮さんが望んだことです」 「あいつが望めばなんでも叶えてやるのか」 「そうですがなにか」 「そ、そうか」 即答されてなんだかスイマセンと謝ってしまいそうな勢いだった。 「ご心配なく。株というのはそう簡単に儲かるものではありませんから。この道数十年というベテランでも、確実に利益を上げられるというわけではありません」 「株の売買って博打みたいなもんだろう」 「そうとも言い切れません。最近はいろんなタイプの投資がありますからね。ギャンブル性の高い投機から、利率のいい貯蓄としての投資も」 「大損したらどうするんだ」 「それはそれで、涼宮さんにとってはいい勉強になるはずです」 ハルヒを観察しつづけてきて十年、悟りの境地に至ったような古泉らしい意見だった。忌々しいことに正論に聞こえる。 「あなたは気がついていらっしゃらないかもしれませんが、高校の頃のがむしゃらな涼宮さんとは違って、今の彼女は抑えるところは抑えてますよ。むやみに暴走しているわけではないようです」 「それが本当ならいいんだがな」 「ひとつ、はっきりさせておきましょう」 「何だ」 「僕はあなたを同僚として、また涼宮さんにもっとも信頼されている人物として敬意を持っています。でも涼宮さんとあなたの意見が分かれるようなことがあれば、僕はどっちにつくでしょうか」 「そりゃあハルヒのほうだな」 「ご理解いただけて非常に嬉しいです」 つまり、なんだ。俺とハルヒが喧嘩したらハルヒの味方をするってことか。 「分かりやすくいうとそうです」 いつになく強気だな。こいつは誰が自分のボスか、自分の中で序列を作ろうとしてるな。まあいい、こっちには長門と朝比奈さんがいる。いざってときはあの二人が味方してくれる。きっとそうだよな、な、俺。 次の日、ハルヒは新聞の束をあれこれ読み漁り、ああでもないこうでもないと唸っていた。 「朝からなにを悩んでるんだ」 「どの銘柄を買うか迷ってるのよ」 「素人がいきなり買うより、様子見たほうがいいんじゃないのか。ほら、シミュレーションだっけ」 ハルヒは俺に向かってグーを四回突き出した。 「実・戦・ある・のみ」 こりゃ数千万の損は覚悟しなきゃならんな。 「なに縁起でもないこといってんの。あたしには確実な情報があるんだから」 「なんだ、業界筋にコネでもあんのか」 「ちっちっち。業界筋ってのはガセネタだらけよ。これよこれ」 ハルヒは古新聞を投げてよこした。 「これがどうかしたか。リサイクルしてもちり紙くらいにしかならんぞ」 「だからあんたはいつまでも平の取締りなのよ。日付をよく見なさい」 平で悪かったな。え、これ、未来の新聞?まずいぞ、これはまずいぞ。 「どうやって手に入れたんだこんなもん」 「未来のあたしに新聞をよこせとメモを送ったのよ」 「おい古泉」 「なんでしょうか」 「これってインサイダーじゃないのか」 俺は古新聞を、じゃなくて未来の新聞を見せた。株価のページがあちこち蛍光ペンで色づけされている。 「あははは。これはいい情報源だ」 「笑ってる場合かよ」 「証券取引監視委員会がこれを見てなんと言うでしょうね。地検がこれを証拠として採用するとも思えませんが」 「インサイダーって職務上の立場を利用して得た情報をもとに売買することだよな」 「ええ。でもこの新聞はまだ発行されていませんから、実際は情報は存在しないことに、プッ」 「笑ってる場合じゃないって」 「す、すいません。誰もが考えそうで、誰もやったことがないことですからね。さすがは涼宮さんだ」 おべっか使いの古泉に向かってハルヒはうんうんとうなずいた。 「でしょでしょ。存在しないはずの新聞の、存在しないはずの情報で株を買っても問題ないわよね」 「ええ。現行法では取り締まることはできないはずです。なんなら弁護士に相談してみましょうか」 それはやめてくれ。ワームホールを見せてくれってことになりかねん。 「未来じゃ取り締まる法律があるんじゃないのか」 「それは規制する法案が国会を通ってから考えればいいんじゃないでしょうか。少なくとも、今のところは」 うーん。いちいち理屈はあってるんだが、なにか人として間違ってる気がするぞ。 「まあできるだけ目立たないようにしてくれ。その、証券なんとかの連中に目をつけられないように」 「分かりました。できるだけ分散させて、一社を買い占めないようにしましょう。適度に損も出して。損は決算のときに赤字として計上できますからね」 「さっすが古泉くん、さえてるわ」 「お褒めいただき光栄です」 なんだかマフィアのボスが悪知恵に長けた子分をほめてるような雰囲気だぜ。俺はハルヒがやる気なら儲かるだけ儲けさせてみようかという気分になっていた。余った分は役員報酬にでもしてくれるだろ。口止め料とも言うがな、キヒヒ。 その日からハルヒはずっとパソコンのモニタをじっと睨みながら、一喜一憂していた。 「見て見て、上がったわ!」 と喜んでいたと思いきや、 「あらっ下がっちゃった。誰が売ったのかしらね、忌々しい」 どうでもいいけど、株式会社と市場経済の関係、分かってやってんのかなこいつ。そもそも会社が資金調達するための仕組みなんだが。 「まあいいじゃないですか。楽しんでるようですし」 古泉が微動だにしないスマイルで言った。 「負けた分はあいつの役員報酬からさっぴいとけよ、と言っても無理だろうな」 「ええ。無理です。今のところ負けていませんから」 「勝ってるのか」 「一千万くらい利益出てるみたいですよ」 まじか。新聞さまさまだな。 「昨日までの株価と未来の新聞を見比べて買ってるみたいです。人気があっても買われすぎているものには手を出さない、テレビなどで流れたネタの銘柄には手を出さない。チャートやシグナルも、抑えるところは抑えています」 なるほどな。数字に関しちゃあいつは特Aクラスだった気がする。こいつはもしかしたらボーナス増額か。 「あーぁ、疲れたぁ」 午後三時十五分を過ぎると、ハルヒは脱力した大きな溜息をついた。 「市況がこんな疲れるとは思わなかったわ」 「肩の力を入れすぎですよ。もっと楽に構えてください」 「えへへ。分かってるけど、気になるのよねぇ自分の買った銘柄がどうなるか」 「分かります。上がったり下がったりするのを見てるのが楽しいんですよね」 「そうそう。なんだか自分が植えた種が育っていくのが見えるみたいなの」 ただのグラフが本当にそう見えるんだったら、数字に詳しいやつがうらやましいぜ。 「古泉くん、悪いんだけど肩揉んでくれる?」 「おやすい御用です」 「あーそこそこ、効くわ。最近凝ってるのよねぇ」 古泉が肘の先でブルブルと按摩していた。な、なんだこのホノボノした雰囲気は。 その日の五時過ぎ、溢れ返る手紙もバイトに任せて俺は仕事もないので早々に退社することにした。ハルヒはまだ経済紙と古新聞を見ている。明日の予習でもしてるんだろう。長門はこれから来るハカセくんを待つというので、俺は喫茶店で待っていることにした。 「キョンさん、ですね」 ドリームのテーブルでコーヒーを飲んでいると後ろから呼びかけられた。振り返ると黒いサングラスに黒のスーツを着た男が二人立っていた。おそろいの格好でおそろいの黒の帽子を被っている。白いシャツ以外は頭のてっぺんから靴の先まで黒い。 「そうですが」 「ちょっとそこまで付き合ってもらいたい」 葬式帰りじゃあるまいに、ネクタイまで黒い。見るからに地下組織か秘密組織か、あるいは表向き存在しないことになっている政府の諜報組織か。またヘンなのが現れたな。こういう輩には関わらないほうが身のためだ。 「悪いが俺は忙しいんで」 コーヒーを飲み終えないままテーブルを離れようとした。背中になにか固いものが突き当たった。全身黒尽くめ野郎が耳元でささやく。 「おとなしく聞いたほうが身のためだぞ」 俺はゆっくりと両手を上げた。それって銃ですか。映画でもテレビドラマでも、日本の日常でほいほいピストルが出現するのはどうかと思うんだが。 「そんなことはどうでもいい。口を閉じて歩け」 後ろからせかされて喫茶店を出た。コーヒー代はもうひとりのやつが払っていたようだった。おごってくれるとは気前がいい。 裏通りに黒塗りの3ナンバーでも待っているのかと思ったが、乗せられたのは、律儀にもパーキングメーターに停めてある軽四だった。秘密組織が軽四ってどうなん、しかもナンバーが“わ”って。CIAがレンタカーって笑うぞ。 両手を紐かなんかで縛られてシートに座ると、布袋を被せられ、密閉型のヘッドホンをさせられた。 「すまんが、道を知られたくないんでな」 ヘッドホンからガンガンとヘビィメタルかパンクらしき音楽が流れてきて、俺の鼓膜は今にも破れそうだった。こんなヘタクソな歌聞かされるんだったらスパイの拷問のほうがまだ楽だぜ。 会社のやつらが俺がいないことに気がつくのにどれくらいかかるだろうか。誰かにメッセージを送らなくてはいけない。ポケットに入っている携帯を何とか取り出し、メールボタンを押した。目隠しされているので誰宛に送ったかは分からんが、ともかく指がボタンの配置を覚えている限りでSOSと入力した。受け取るのが誰であれ、救援要請だ、勘を働かせてくれ。 六時までに俺が戻らなかったら長門が異変に気がつくだろう。あるいは機関の誰かが俺を見張ってて、すでに森さんあたりが動いてくれているかもしれない、などと自分に希望を持たせてみたりした。 流れていた曲が最初に戻ったところで、車を降ろされた。あれがCDかMDのアルバムだったとして、四十分から五十分てところだろう。もしかしたらぐるぐる同じ道を回ってただけかもしれんが。 袋を被せられたままエレベータらしきものに乗せられ、どうやらどこかの建物の地下らしき場所にいることは分かった。問題はどこの建物かなんだが。 固い床の上を歩かされ、パイプ椅子に座らせられた。そこでやっと袋から開放されてご対面となった。部屋は狭く、天井から下がった傘のついた電球が揺れている。テーブルとパイプ椅子が二つあるだけだった。いよいよこいつらの目的が判明する瞬間だ。 「お前の会社が株の不正取引をしていることは知っている」 な、なんで漏れたんだ。ハルヒが喋ったのか。 「不正に得た情報で株を売買している。インサイダーは犯罪だ」 「さあて。なんのことやらさっぱりだな」 「我々の諜報能力を甘く見てるようだな。お前は昨日、道で拾った千円札をネコババした。拾得物横領だ」 ギク、見てたんすか。 「三日前に車で信号無視をしておばあちゃんを轢きそうになった」 「あ、あれは雨が降ってて視界が悪かったんだ」 「どうだかな。よそ見してたんじゃないのか。さらに一週間前、我慢できなくて駅の裏で立ちションをした。軽犯罪だな」 な、なんなんだこいつは。機関の連中か。隣の部屋で古泉がほくそえんでるんじゃないか。 「まだある。十日前、飼ってる猫に八つ当たりして蹴飛ばした。動物虐待だ」 あれを知っているのは確か、ええと……。俺は背の高いほうに向かって言った。 「おい、そこの」 「なんだ」 「お前は俺だろ」 「なんのことだ?」 「とぼけんな。いつの時代か知らんが未来から来た俺だろ。それからそっちの小さいほう、お前は長門だな」 「……」 二つのサングラスが互いに顔を見合わせ、俺を見た。 「……なぜ、分かった」 俺たち何年付き合ってると思ってるんだ。お前の雰囲気は目を閉じていても分かるぞ。 「……降参」 黒スーツの長門が両手を上げた。ちっこい方の正体はうすうす気がついていたと思うんだが、背の高い方の正体までは分からなかった。鏡に映った自分の姿は意外と思い出せないもんだ。 サングラスの俺は見たところ、俺よりだいぶ年上のようだった。声も中年っぽい。ここは朝比奈さん方式で俺(大)と呼ぶべきか。俺(大)は長門に向かって言った。 「だから姿を見せないほうがいいって言ったんだ」 「……あなたがついて来るよう願った」 お前らこんなところで仲間割れすんな。どう見てもでこぼこコンビにしか見えん。 「バレちゃしょうがねえな。まあ、そんなところだ」 「いつの時代から来たんだ?」 「十年ほど未来だ」 「どうやって来たんだ?」 「そりゃ時間移動技術に決まってるだろ」 「それは分かってるが、じゃあワームホールは人が通れるようになったのか」 「ワームホールとは別の手段で来た」 「別の手段って、朝比奈さんか?」 「いや、朝比奈さんは来てない」 「じゃあ本当のタイムマシンが完成したのか」 「それは禁則事項だが、まあ曲がりなりにも完成したというべきか」 お前、禁則事項の意味が分かってないだろ。未来の俺はそのへんを突っ込まれると都合が悪いらしく、慌てて話題を変えた。 「さっきの話だが、ハルヒがインサイダーで稼ぎまくったのは本当だ」 「捕まったのか」 「ああ。地検の連中が書類やらパソコンやら全部持っていった」 「どうでもいいが縛っている手をなんとかしてくれ」 「あ、ああ。忘れてた」 俺(大)は手首に巻かれていた安っちいナイロンの紐らしきものを切り、ポケットから新聞を取り出した。近頃の俺はなにかと新聞に縁があるようだ。俺は暗い電球の明かりの下に持っていった。 ── 「世界初、タイムマシン」今世紀最大の発明と称する技術が昨日発表された。時間移動技術の実用化のめどが立ったとして、株式会社SOS団(社長:涼宮ハルヒ。鶴屋涼宮グループ)が記者会見を開いた。SOS団は十年ほど前から時間移動技術の開発に着手しており、世界に先駆けての実用化は、長年の実験によって理論化された技術に裏打ちされたものであるという。今回の発表で世界各国の財界、政界、物理学会の注目を浴びているが、日本政府によるコメントは現在のところ出ていない。一方で、政府与党による研究部会、識者を集めた文部科学省の調査会「時間移動技術研究会」の発足も噂されている。また野党内では、この技術が軍事利用されるのではないかという懸念も囁かれている。 ── 涼宮氏の学生時代に担任教師だったという岡部さん(57)によると「涼宮君は高校の頃から天才ぶりを発揮していて、私はきっといつかなにかでかいことを実現する器だと信じていました。当時、まわりには理解されていなかったようですが」という。 あのハンドボール野郎、今になって恩着せがましく恩師面すんじゃねえ。 それから俺(大)は新聞をもう一部取り出した。一面には大きく「世界初、時間犯罪」と書かれている。この新聞、世界初が好きだな。 ── 「世界初、時間犯罪」株式会社SOS団の代表取締役社長、涼宮ハルヒ(33)が株のインサイダー取引による金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。同社は十年前から時間移動技術を開発していたが、実験当初から資金調達のために未来の株価情報を密かに持ち込んでいた疑い。タイムマシンが犯罪の道具として使われたのはこれがはじめて。さらに取締役会の古泉一樹(33)、長門有希(33)、キョン(仮名)(33)も共犯、幇助の疑いで逮捕。地検特捜部では出資していた鶴屋ホールディングスの関与を追及している。 「なんだ、俺って新聞でも本名で呼ばれねえのかよ」 などと感傷に浸っている場合ではない。逮捕だぞ逮捕、ヘタすりゃ登記取り消されて会社取り潰しだぞ。 「逮捕されたんだったらお前らなんでここに来れるんだ?」 「鶴屋さんが保釈金を積んでくれたんだ」 「また鶴屋さんか……。いい加減あの人のスネをかじるのはやめたらどうだ」 「お前に言われたかねーな」 「お前ってお前だろう」 「お前のほうが事の発端に近いんだから、お前のほうが責任が重い」 またそんなハルヒみたいなわけの分からん小理屈を。 「社長が捕まっちゃ会社がやっていけんだろう」 「だからハルヒを止めてもらいたんだよ」 うーん、困ったぞ。ハルヒがいないとワームホールが完成しないが、ワームホールのせいでハルヒが捕まっちまう。 「いや待て。ワームホールがあるからじゃなくて、ハルヒが未来から情報漏れ起こしたからまずいんだろう」 「まあそういうことだ」 「じゃあこうしよう。利益は電気代を払える程度に抑えて、残りは損にする」 「それでもインサイダーには変わらんだろう」 「適当に損を出せばいい。利益を出しすぎるから目をつけられる。それに損をした分は赤字として計上できるらしいしな」 「お前ができるっていうんならいいが。会社潰さないでくれよ」 それから俺は自ら頭が痛くなるような質問をした。 「ちょっと聞くが、俺がハルヒを止めるのに成功したんだとしたら、何でお前らがここにいる?」 「難しい質問だな」 「失敗したからここに来たんじゃないのか」 「……事象がループしている」 時間論が苦手な二人の俺は眉間に皺を寄せて、こめかみをグルグルと揉んでいた。今の俺の行動が歴史を変えて未来の俺が変わるのか、それともこいつらが帰ったときに未来が変わってるのか。 前にも似たようなことがなかったか。なんだろうこの違和感は。既視感、いや違う。もっと別のなにか、未視感とでもいうんだろうか。 「とにかくだ、ハルヒの進む方向を変えてやらにゃならん。それがお前の仕事だ」 やれやれ、またハルヒの尻拭いか。 「まあ俺がなんとかするから、ここは任せて未来に帰れ」 「じゃあ、あとは頼むぞ。俺たちはこれから裁判の準備をしないといけないからな」 「未来はいろいろと大変なんだな」 ああ、この先十年もハルヒから解放されないのだと知った今、気が滅入る。やれやれだぜ。 ドアが開いて長門が飛び込んできた。この時代の長門だ。俺の姿を見ると、目にもとまらない俊敏な動きで未来の長門の首を締め上げた。ややこしいので未来の長門を長門(大)としよう。 「……彼になにをした」 「……なにもしていない」 俺の長門は珍しく荒い息をしていた。とにかく落ち着かせないと、こいつらが喧嘩したらえらいことになる。 「おい長門、落ち着け。俺は大丈夫だ」 「……なにが、あった」 「まあその新聞を見ろ」 長門はテーブルの上に乗っている新聞を一瞥した。 「……」 「こいつらはそれを阻止しに来たんだとさ」 「……分かった。でもわたしに相談するべきだった」 「……歴史に与える影響を最小限にするべきだと判断した」 「まあいいじゃないか。俺がハルヒを止めれば済むことだし」 俺の長門は複雑な表情で俺(大)を見た。俺を拉致したのが俺本人だというのだから、長門も複雑な心境だろう。もし俺と俺(大)が喧嘩してたら長門はどっちの味方をするんだろうか。無言のまま、どっちが勝つかじっと眺めていそうな気がする。 「せっかく来たんだからメシでも食っていけよ。未来の話を聞かせてくれ」 「それはどうだろうな。いろいろと禁則事項があるしな」 「いいだろ、今までかなり禁則違反してるんだし」 「俺はいいが、どうする長門?」 俺(大)は長門(大)と相談していた。結局二人の俺と二人の長門という奇妙な組み合わせで晩飯を食うことになった。 四人は一旦レンタカーを帰しに駅前まで乗り付け、ハルヒに見つからないようにタクシーで長門のマンションへ行った。 二人の長門はキッチンで晩飯の用意をしていた。無言でサクサクと動く二人は、役割分担が厳密に決まっているようだ。もしかしたら特殊な方法で会話しているのかもしれないが。 「長門、なんか手伝おうか」 「……お客さん」 てめぇは客なんだから居間に座って茶でもすすってろ、という感じでステレオで言われた。俺はすごすごとリビングの座布団の上に戻った。 「異時間同位体と協調するって、どんな感じなんだろうか」 「人間でいうところの双子みたいなもんじゃないか」 前にも似たようなことがあったっけな。 「長門のやつ、ぜんぜん変わらないな」 「あれでも多少は体の分子の再構成をしたんだがな」 「そうなのか」 「ああ。でも俺の希望で二十五才仕様くらいで止めてもらってる」 確かに、俺も長門には今のままでいてほしいと思う。俺(大)の左手薬指を見ながら、思い切って聞いてみた。 「お前たち、結婚はしないのか?」 「それは禁則事項だな。お前が自分の思うところをやればいい」 誰かが似たようなセリフを言っていたことを思い出し、俺たちは顔を見合わせてニヤリと笑った。俺に兄貴がいたら、こういう感じだったのかもしれない。 「ところでお前ら、どうやって未来に帰るんだ?」 「実験室にあるワームホールを拡大して帰れるらしい」 「うちのあれはまだ不安定すぎて質量の大きいものは送れないらしいんだが、大丈夫か」 「……わたしが安定したエキゾチック物質を持っている」 まあ長門にかかればどんな方法でも帰れそうだが。 時計を見ると十一時を回っていた。俺は二人を交互に見ながら言った。 「今日はもう遅いから泊まっていったらどうだ」 「そうだな。ここの長門が泊めてくれるっていうんなら」 「……いい」 いつ用意していたのか、長門がペアのパジャマを出してきた。それってもしかしてほんとは俺用? 「すまんな長門」 「……お礼ならいい。あなたのために用意していた」 俺の長門が頬をポッと赤らめたような気がしたが、なんだか俺(大)のほうが気に入ってるようだぞ。 長門は和室に布団を二つ敷いた。こいつら同じ部屋に寝せて大丈夫か、まさかこいつらあらぬ関係じゃなかろうな。いやいや、いくら自分でもそこまで立ち入るのは邪推ってもんか。長門(大)がなにかを思いついたように俺の長門に言った。 「……この部屋、十年間貸して」 ええと長門(大)さん、どういうことでしょうか。 「……時間凍結で当該時間ポイントに戻る」 「……分かった」 俺の長門はコクリとうなずいた。 「よく分からんのだが、解凍するのに長門本人が必要なんじゃないか?」 「……わたしは、いる」長門(大)が長門を指差した。 「ええと、ややこしいが、十年経ったらお前ら二人を解凍して、それから俺と長門が過去に行くのか」 「……そう」 「もし歴史が変わったらどうなるんだ?」 「……その場合は何もなかったことになる。わたしたちは消える」 「消えるって消滅するのか」 「……時間移動がなかったことになるだけ。元の時空に存在している。つまり、あなたたち二人」 説明されると無駄にややこしいが、死ぬわけじゃないんだな。 どうやら本気で十年間の眠りに就くつもりらしく、二人は布団に入った。 「じゃあな。元気でやれよ」 「ああ。お前らもな」 俺の長門が電気を消して襖を閉めようとした。長門(大)が布団の中から待ってと言った。 「どうしたんだ?」 「……」 長門(大)はモソモソと隣の布団に潜り込み、俺(大)の腕に寄り添った。 「お、おい長門、こいつらが見てるだろ」 「……このまま、凍結して」 「しょうがねえなぁ」 パジャマの俺(大)の顔は赤くなっていたが、まんざら嫌でもなさそうだった。そんな二人をニヤニヤしながら見ている自分に気がついて、いかん、無粋だったなと襖を閉めた。 長門が詠唱し、襖が一瞬白く光っただけで時間凍結は終わった。次に会えるのは、はるか十年後か。十年も添い寝できりゃ幸せだろうぜ、まったく。前のときは、長門はひとりきりで俺と朝比奈さんの目覚めのときを待っていたんだよな。まあ今回はひとりじゃない。 「十年後にこいつらが目覚めるまで、俺も付き合うよ」 「……」 長門は何も言わず、うつむいたまま俺の首に腕を回して抱きついた。未来の二人に当てられたのか、長門はいつまでも離れようとしなかった。 「しょうがないなあ。これから一緒にドライブでもするか」 長門はコクリとうなずいた。こういうシーンを見ると長門はいつも甘えてくるんだ。そこがこいつの萌え要素だったりするのだが。 未来の俺たちの使命に、任せろとは言ったものの、ノリに乗っているハルヒの株取引に水を注すようなマネをしたらイライラがつのってまた閉鎖空間が発生しかねん。神人の目に¥マークがメラメラと燃えて暴れている様子を想像して寒気がした。 ハルヒに気付かれないようにやめさせる方法はないものか。一気に損を出すと神人が暴れかねんので、少しずつ損をさせて最終的に利益が出ないようにしちまえば、自分には投資の才能がないんだと諦めるかもしれない。 俺ひとりじゃ無理だな。資金と人材がいる。こんなときだ、機関に頼もう。金のことなら多少は分かってるだろう。 「古泉、ちょっと来てくれ」 「なんでしょうか。僕はこれから先様と打ち合わせなんですが」 俺は黙って新聞を見せた。 「涼宮さんがインサイダーで逮捕ですか!?だってさっきそこで会いましたよ」 「日付を見ろ」俺は新聞の端をポンポンと叩いた。 「未来ですね」 「昨日俺が持ってきたんだ」 古泉には通じなかったらしく怪訝な顔をしていた。 「つまり未来の俺が持ってきたんだ。昨日会った」 「ということは、このままいくと不穏な未来が待っているということでしょうか」 「そうだ。だからハルヒの株売買を阻止しなければならん」 「分かりました。でもいきなりやめろと言うのは無理かと」 「そこでだな、頭のいい誰かがハルヒの売買してる銘柄の株価をやんわりと調整して利益を出さないようにしてくれる、と俺たちは幸せになれる」 「株価操作は犯罪ですよ」 「まあそうかもしれんが、それが誰なのか俺たちはたぶん知らない」 「つまり機関にそれをやれと?」 「どこの機関のことを言ってるのかよくわからない」 目をそらして言う俺は棒読みだった。 「なるほど、分かりました。それなりの資金もかかりそうなので幹部に話してみます」 「ああそれから、古泉」 「なんです?」 「この会話はなかった。お前はまっすぐ打ち合わせに行った」 「……分かりました。僕も記憶にありません」 人に頼みごとしておきながらなんて偉そうなんだと、古泉はちょっとムッとしたようだった。ふっ、そんな簡単に感情が顔に出るようじゃ、地下組織の一員としてまだまだだな。 六時過ぎ、打ち合わせから帰ってきた古泉はやけにイライラしていた。たぶん機関に寄ってきたのだろう。古泉が素のキャラクタだったなら、またやっかいなことを頼みやがって、と呟いたに違いない。ハルヒが帰ったので機関の協力が得られそうかどうか聞いてみた。 「どうだ。やれそうか」 「ええ。ただし、涼宮さんのパソコンを監視させてもらいます」 「カメラか」 「小型のCCDを壁の画鋲に仕込んでおきました。それから、涼宮さんの机の引出しを漁ってもかまいませんか。例の新聞のコピーが欲しいので」 「ああ、構わんだろう。俺はよそ見してるから」 古泉は白い手袋をはめてハルヒの机の引出しを開けようとした。 「カギがかかってますね」 あいつ、こういうことはマメなのな。俺なんかロッカーのカギすらかけたことないぜ。 古泉はポケットから、精密ドライバーのような歯医者の七つ道具のような金具を取り出した。それってピッキングですか。ああ、いや俺はなにも見てないからな。スプレー式潤滑油をひと振りして鍵穴にドライバーらしきものを突っ込み、ガチャガチャと動かしていたと思ったら引出しが開いた。古泉、もう別の稼業でも食っていけるぞ。 「人聞き悪いですよ。これも諜報活動の一環です」 引き出しの中はごちゃごちゃと、ゴミ入れなのかガラクタ入れなのか分からないありさまだった。人は見かけによるな。あいつの部屋もこんな具合かもしれん。まあ、ご禁制の品とか出てこなくてよかったが。古新聞の束、新聞の切抜き、銘柄リストなんかが出てきた。 「これくらいあればなんとかなるでしょう。あとはカメラで随時監視します」 「少しは利益を出させてやってくれ。神人が暴れるとお前が苦労する」 「あなたも無理な注文ばかり言いますね」 ニコッと笑った古泉の目の縁がピクと痙攣したのを俺は見逃さなかった。 それから二、三日はハルヒの奇声が連発していた。 「きゃーっ、また上がった!ちょっとキョン見て見て、新聞のとおりよ。このままいくとビルが建つわよ」 「そうかい」 お前が喜んでるせいで俺は拉致されたり暗闇で尋問されたりしてたんだがな。 俺の冷ややかな眼差しもどこ吹く風、ハルヒはケタ違いの利益を上げていた。濡れ手に泡だが。ところが、四日目にしてツキが変わったようである。ハルヒが朝からクビをかしげている。 「あれれ、この株上がるはずなのになんで下がってんのかしら」 俺がモニタの陰に隠れてくっくっくと笑っているのに気がついていない。ハルヒの後ろの壁には画鋲兼超小型カメラが三つほど刺さっていて、モニタをじっと睨んでいた。そんなハルヒを見ている古泉は、眉毛を寄せて笑顔を作るという複雑な表情をしていた。 「まったく、どうなってんのよこの新聞。ちょっと信憑性低いんじゃないの」 そんなこたぁないさ、同じ情報でお前が負けるように操作してるんだからな。 ハルヒが突然机につっぷして叫んだ。 「だあーっ、みんなごめん。二百万負けちゃった」 「ええっ!!」 俺は大げさに驚いてみせた。 「に、二百万って、お、お前、俺の給料の何か月分だよ」 「ごめんね。ほんとにごめんね。次で必ず取り返すから」 パチンコに通うおっさんの言い草だった。俺たちに向かって両手を合わせるハルヒは元気がなかったが、これも仕方あるまい。 日を追うごとにハルヒが謝る回数が増えてきた。皆に向かって腰四十五度で頭を下げたり、両手を合わせて拝んだりしていた。そんなことがあるたびに、俺は昼飯代にしたら何日分か、ガソリンにしたら何リッターか、恵まれない子供が何人養えるか、十円チョコがいったいいくつ買えるかまで大仰に説明した。ハルヒはついに自分の給料はいらないとまで言い出した。 「なあハルヒ、そろそろ潮時なんじゃないのか?」 俺は得意の流し目で、萎れたハルヒを見た。 「そうね……」 トータルではたぶん電気代が払えるくらいプラスになっていたはずだが、ハルヒは為替やら先物取引やらに手を広げていて、もういくら勝っていくら負けているのか分かっていないようだった。 次の日、ハルヒはもう画面をぼんやり眺めているだけだった。やややつれている気もする。もう売買はしてないようだ。 「ハルヒ、株はやめたのか?」 「ごめん……また五百万損切りした」 口を開くのもだるいようで、腕をだらりと下げて机に顔を押し付けていた。俺は古泉に向かって親指を立てた。古泉は苦笑していたが、やがて電話を取りボソボソと誰かに指示を出していた。そろそろ監視もやめるつもりだろう。 「涼宮さん、元気出して。まじめに働けばそれくらいすぐ取り返せるわ」 朝比奈さんがお茶を運んできた。 「ありがと、みくるちゃん。お茶……おいしいわ」 ハルヒがお茶をありがたがるなんて、相当凹んでるようだ。こころなしか目が潤んでいるようにも見える。 「みんな、調子に乗ってごめんね。今日で株やめるから。これ以上損したら、あたし食欲なくなる」 どうやら一件落着か。なんだか悪いことしたみたいな気になって、俺はハルヒから目をそらした。 エレベーターホールの自販機でお茶を買おうと席を立ったところで、古泉に呼び出された。また男子トイレか。 「どうやら成功したようだな。世話焼かせてすまん」 「それはいいんですが、実は涼宮さんの利益を調整するために売買していたところ、手違いで数億円の利益が出てしまいまして」 な、なんだって!?そんな手違いで簡単に数億円が手に入るほど世の中に幸運が転がっているのか。 「機関では浮いた金をどうしたものか思案しているんです」 「慈善団体にでも寄付したらどうだ」 「それも考えたんですが、あいにく機関は表向き存在しないことになっていますから。数億円の寄付は裏金の類じゃないかと怪しまれますよ」 いまどきそんな奇矯で奇特なやつはいないだろうな。 「じゃあハルヒからのご祝儀ってことでもらっとけばいい」 「ほんとにいいんですか」 「気にするこたないさ。今までいろいろと助けてもらったんだ、それくらいの報酬は受け取っていいだろ」 「じゃあ幹部にそう伝えます」 「下手に動かすと怪しまれるから、少しずつ経費にまぜろ」 なんだかマフィアに金の洗濯をレクチャーしたみたいな気分だ。森さんや新川さんや多丸兄弟のボーナスに少しでも心づけができりゃ、インサイダーに荷担した俺の良心の痛みも少しは癒されるってもんだ。 その日の帰り、長門のマンションに行くとあいつらの靴がなかった。変だと思って襖に手をかけると簡単に開いた。中は空っぽだった。 「消えちまったな。本当に未来に帰ったのかな、あいつら」 「……そう。十年待たずに帰った」 十年後の再会に何かを期待していたのか、長門は少し残念そうだった。 俺(大)が残していった新聞の内容が変わっていた。トップ記事はハカセくんと長門とハルヒが三人揃ってノーベル科学賞を受賞するなどという、とんでもない未来のニュースだった。長門ならその功労を評価されてしかるべきだが、なんでハルヒまでが。それはともかく、ミジンコ並みの生命力で生きていたらしい谷口がインタビューに答えていた。 ── 学生時代の涼宮氏と親しかったという谷口さん(33)によると「高校の頃、SOS団を作るようにと進めたのは実は私です。メンバーには逸材ばかりが揃っていましたね。人を惹きつける涼宮君のカリスマ性、長門君の天才的な科学知識、この世のものとは思えない朝比奈さんの美貌、あとはどうでもいいですが。選りすぐりの集団と言うべきでしょうか」という。 あのWAWAWA野郎、そのうち締めたる。 「労働者諸君、おっはよう!いいこと思いついたわ!」 翌朝、ハルヒがまたドアの寿命を短くする勢いで入ってきた。もうハイテンションに盛り返したのか。 「何言ってるの、あたしはいつでもハイテンションでハイボルテージよ」 「今度は何なんだ」 「競馬よ競馬!大穴を当てるわ」 ハルヒの手には派手な赤と青のスポーツ紙が握り締められていた。 暗転。 【仮説2】その1へ
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涼宮ハルヒ無題1 涼宮ハルヒ無題1 2話
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第一話 「おはよう、涼宮さん。最近嫌な事件が続いてるのね」 あたしが朝教室に着くなり阪中さんが話しかけてきた。 「おはよ。なにそれ?どんな事件?」 そう返事すると少し驚いたような顔をして教えてくれた。 「知らないの?最近この辺りで女子高生が誘拐される事件が続いてるのね。犯人はまだ捕まってないし…怖いのね…」 えっ?そんな事件があったなんて全然知らなかったわ…これは気になるわね… 「涼宮さんも気をつけた方がいいのね。それじゃあまたなのね」 そう言い残し自分の席へと戻って行った。 それと入れ替わるようにキョンが教室に入ってきた。 「おう、ハルヒ。おはよう。…どうした?」 ボーッと考え事してたからだろうか、あたしの顔を覗きこむようにたずねてきた。 …って顔近いわよっ! 「キョン!大事件よ!」 さっき聞いたばかりの事件をキョンに話した。 「ああ、その事件なら俺も知ってる。昨日のニュースでもやってたしな。 嫌な話しだぜ…」 なんだ、知ってたんだ…それなら話は早い! 「いい?これは放っておけない大事件だわ!早速今日の放課後からSOS団で調査開始よ!」 あたしは椅子の上に立ち上がり、しかめっ面をしたキョンへと高らかに宣言した。 「おい、ハルヒ!バカな事言うな。警察でも探偵でもない俺達に何ができる?」 むっ…なに呆れた顔してんのよっ! 「もし事件に巻き込まれたらどうするんだ…危険な目にあうかもしれないし…俺は…嫌だぞ、ハルヒがいなくなったりするのは…」 とつぶやくのが聞こえた。 「え…それってどういう―」 「と、とにかく事件のことは警察にまかせておけよ。わかったな?」 「わ、わかったわよ…」 急に話を終わらせたキョンにしぶしぶと答えるとちょうど岡部が入ってきた。 「みんな、おはよう。ホームルーム始めるぞ。それとハンドボールはいいぞ!」 岡部の戯言が耳に入らないくらいあたしはドキドキしていた。 さっきの言葉、どういう意味だったのかな…もしかしたらキョンもあたしのこと…好き、なのかな? いつか…この大好きって気持ちをキョンに伝えたい。今週の不思議探索の時に…頑張ってみようかな… その日あたしは授業中もずっと一人でにやけていた。かなり危ない人みたいね…今日はすごくいい日だわ!記念日にしてもいいくらいに。 そんなことを考えているとあっという間に放課後になった。 「キョン!掃除なんてさっさと終わらせて部室に来なさいよ!遅れたら死刑なんだから!」 「はいはい、わかってますよ。団長様」 いつもみたいな会話をして、一人で部室に向かった。 そして勢いよく部室のドアを開いた。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「あ、涼宮さん。こんにちわー」 あたしが部室に入るとメイド服姿のみくるちゃんがお茶の準備をしようと立ち上がる。 「ヤッホー、みくるちゃん。あれ、有希と古泉くんは?」 「えっと、二人ともクラスの用事で遅れるそうです。さっき部室に来て涼宮さんに伝えておいてくださいって言ってましたよ」 温度計とにらめっこしながらみくるちゃんが答えてくれる。 「そうなの。…ん?」 机の上に置いてあるものに気づく。編みかけの…マフラーかしら。 「みくるちゃん、マフラー編んでるの?あっ、もしかして好きな男の子に?」 冗談めかして言ってみる。 「え?あぁっー、そ、それは…その…」 んー、顔を真っ赤にしたみくるちゃんも可愛いわね! 「実はキョンくんにプレゼントしようと思って…この前新しいお茶の葉をくれたからそのお礼に。このお茶がそうなんですよ」 瞬間的に思考が凍りついた。 嬉しそうな顔したみくるちゃんがあたしの机にお茶を置く。 ちょっと待って…キョンが?みくるちゃんに?いつのまに…? 自分の中で黒い嫉妬が生まれるのがわかる。 「えへへ、マフラー渡す時にキョンくんにわたしの気持ちを伝えようかなって、ふふ、そう思ってるんです」 その言葉を聞いて、さらに黒い嫉妬は叫びをあげる。 「そん……対……許……わよ」 「はい?どうしたんですか?涼宮さん?」 聞き取れなかったのだろう、みくるちゃんが側に来る。 「そんなの絶対に許さないわよっ!なによ!こんなお茶いらないわ!」 机の上に置かれたお茶を思いっきり床へ叩きつけた。 ガシャーーンと陶器が割れる音が狭い部室に響きわたる。 「な、なにするんですか!せっかくいれたお茶なのに…」 泣きそうな顔でみくるちゃんが睨んでくる。 「SOS団は団内恋愛禁止なのよ?それを…あんたは!」 自分の感情を抑えきれなくなりみくるちゃんに掴みかかる。 「しかも…キョンだなんて…絶対に認めないわ!キョンはあたしのものよ?あんたなんかよりあたしの方がずっとキョンにぴったりだわ!諦めなさい!これは団長命令よ!?」 「わ、わたしだってキョンくんのこと大好きなんです!諦めたくありません!それに…わたしの気持ちなんだから涼宮さんには関係ないじゃないですか!」 思ったより強い力で突き飛ばされあたしは尻餅をついた。 なによ…みくるちゃんのくせに! 目の前が怒りで真っ赤にそまる。 そして気がつくとあたしはみくるちゃんを思いっきり突き飛ばしていた。 「あっ…」 みくるちゃんが後ろに倒れると椅子に強く頭をぶつけ、ガンッと鈍い音がした。 しばらく苦しそうにうめいていたがやがて動かなくなる。 ハッと一気に現実に戻った私は目の前の光景を見つめた… 「み、みくるちゃん?…嘘でしょ…?目を…開けてよ…」 震える手でみくるちゃんをゆさぶる… でも…ぴくりとも動かない。 「そ…そんな…い、嫌…嫌あああああああああああああああああああああああ!」 叫び声が響き渡る。 どうして…どうしてこんな事に…どうすればいいの… その時、ノックの音がして、部室のドアが開いた。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「うー、寒い寒い。っ!おい!ハルヒ…なにやって…」 部室に入ってきたキョンが目を見開いてあたしをみつめる。 最悪…よりによってキョンが入ってくるなんて… 「なんで朝比奈さんが倒れてるんだ?なにがあったんだよ!なあ!ハルヒィ!」 大声で問い詰められて身体の震えがいっそう激しくなった。 どうしよう…このままじゃキョンに嫌われちゃう。嫌だ、嫌だ!そんなの嫌だ! 「脈がない…死んでる、のか…」 キョンがみくるちゃんの脈を確かめながらつぶやく。 「あ、あたしは悪くない…みくるちゃんがキョンの事好きだって言うから…つい…カッとなって…」 「…お前がやったのか?どんな理由があるにしろお前が朝比奈さんを殺したことには変わりないんだぞ!」 すごい顔をしながら睨んできた。 「だってだって…嫌だったもん!キョンがとられちゃうの嫌だったもん!」 必死になって言い訳を並べる…きっとあたしは泣きそうな顔してるんだろうな… もうおしまいね…二度と今までの日常には戻れないだろう。 しばらく沈黙の時間が続く。やがて、 「…ハルヒ、聞いてくれ。俺がにいい考えがある…だから安心しろ」 さっきとはうってかわって ものすごく優しい声でキョンが言った。 最初キョンの言っている事がよく理解できなかった。てっきり怒鳴られてすぐ警察につきだされると思ってたのに… 「それって…あたしを助けてくれるって、意味…?」 「そうだ…こんな時だけど…俺はハルヒが好きなんだ!だから…離れたくない!」 「あたしも…嫌。大好きなキョンと離れたくない…ずっと、ずっと一緒にいたい!」 我慢しきれず涙がこぼれる。 「絶対俺がなんとかするから。頑張って二人で乗り越えよう。な?」 そう言って優しく抱きしめてくれた。 「うん…うん。二人で…頑張る!」 あたたかいキョンの腕の中で、あたしは泣いた。 こんな状況だけどすごく幸せで嬉しかった。 だってそうでしょう?ずっと好きだった人と両想いだったことがわかったんだから。 でも、この時あたしは気付いていなかった。自分の犯した罪の重さを、そして、どんな結末が待っているのかを… --------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「とりあえず…もうすぐ長門と古泉が来るから急いで死体を隠さないとな」 キョンは辺りをみまわしながらいろんな所を探ってる。 「よし、掃除道具入に隠しておこう。後でもっとわかりにくい場所に移動させれば大丈夫だ」 キョンがみくるちゃんの死体、かばん、制服などを掃除道具入につめこみ、床にちらばった茶碗の破片を片付けた。 「これでよし…っと。ハルヒ、二人が来てもいつも通りふるまうんだぞ?」 「うん…わかった。」 私は団長机へ、キョンはいつもの場所へと座る。すると、 「いやあ、遅れてすみません。」 「……………」 相変わらず笑顔の古泉君と無言の有希が部室に入ってきた。 「おう。遅かったな。今日はどのゲームにする?」 「おや、あなたから誘ってくるなんて珍しい。そうですね、今日は―」 キョンの向かい側の椅子に座る古泉君。有希は窓辺に座って読書を始める。 私はネットサーフィンでもしようとパソコンの画面に集中する。けど、どうしても視線は掃除道具入へといってしまう。 「涼宮さん?さきほどから落ち着かない様子ですが、どうかされました?」 キョンとチェスを始めた古泉くんが聞いてくる。 「ああ、こいつ朝から体調が悪いみたいなんだ」 「そう、そうなのよ!でも平気だから気にしないで」 キョンのフォローで助かった。 「そうでしたか。ところで朝比奈さんの姿が見当たらないようですが、どこへ行かれたのでしょう。先程部室に顔を出した時にはいらっしゃったのですが」 いきなりみくるちゃんの話題が出て思わず息をのむ… 「あ…えっと…」 「朝比奈さんならお前らが来る前に用事を思い出したとかで先に帰っていったぞ」 またもキョンがフォローしてくれる。 でも、少しずつ身体が震えてきた… 「なるほど。…涼宮さん?本当に大丈夫なんですか?震えていますが…風邪ですか?無理なさらないほうが…」 心配そうな顔をした古泉くんが話しかけてくる。 「うん。そうね…今日はもう帰るわ。このまま解散にしましょ」 「おう。わかった」 「かしこまりました」 「……………了解」 それぞれに答えみんなが帰り支度を始めた時、 ガタッ…! 掃除道具入から音がした。 っ…!なんで…!こんな時に! みんなの視線がいっせいに掃除道具入へとむけられる。 気になったのか有希が立ち上がり掃除道具入の扉に手をかける。 どうしよう!まずい、まずいまずいまずい… もう、ダメだ…諦めて目をつぶった時、 「長門、中のホウキが倒れただけだろ。気にするな」 有希を止める声が聞こえた。 「………………そう」 有希はほんの少し怪訝そうな表情を浮かべたが、やがて扉から手を離した。 それを見てあたしは気づかれないように息を吐き、そのまま椅子にもたれかかった。 本当に危なかった…キョンが止めてくれなかったら今頃… 「それじゃあお先に失礼いたします」 「………お大事に」 二人が先に出て行くと部室には私とキョンだけが残った。 「ふー、なんとか誤魔化せたな。大丈夫か?ハルヒ」 「う、うん…大丈夫…ありがと」 キョンは掃除道具入を開けて中を覗きこんだ。 「死体を運べるくらい大きなバッグを探してこなきゃな。ちょっと待っててくれるか?」 そう言うとキョンは部室を出ていこうとした。 「キョン!なるべく…早く戻ってきてね」 「ああ。わかってるよ。すぐ戻るからおとなしく待ってろよ」 キョンを見送って一人になると今さらながら自分のしでかした事に頭を抱える。 これから一体どうなるんだろう… 誰にも見つからないでうまく隠せるのだろうか… 私は椅子に座ったまま目を閉じた。
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12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 10 16 33.26 ID owgHTflm0 涼宮ハルヒの憂鬱 ある男子にほれた主人公は精神的な持病によってアプローチすることができない。 だが、変な奴らを集めてじょじょに接近していく。 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/04/30(水) 10 33 05.01 ID Eyt7IFwN0 涼宮ハルヒの憂鬱 主人公涼宮ハルヒがいじめられまくって憂鬱になってしまう。 それを見かねた友達がSOS団を立ち上げ、いろいろあってだんだん元気になる 113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 11 26 48.60 ID 4+jRQ26x0 雨宮ハルヒの憂鬱 学生ハルヒに破壊されそうになっている世界を救うことをコンセプトに ヒロインミクルのコスプレを愛でるアニメ 198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 12 33 17.27 ID JaCO1CRtO ハルビン ハルヒがなんか宇宙人の長門を倒す話 465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 15 46 34.11 ID SoTC0tpT0 「涼宮ハルヒの憂鬱」 馬鹿なクラスメイトに辟易しながらも日々の日常を贈る 厨二病の少女を主人公にした風刺の強い青春群像ドラマ 478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 15 54 10.95 ID LAYfMD3rO 涼宮ハルヒの憂鬱 主人公涼宮ハルヒは11歳の女の子 体は女心は男の葛藤の毎日に嫌気がさしてきた冬、涼宮は男に恋をしてしまう 体は女なのだから正常に思われるが心は男 何と切り出せば良いのか分からずに悶々と過ぎ行く日々を綴るラブストーリー 633 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 18 49 02.06 ID blR5Fl6RO ハルヒ 宇宙人がハルヒをおそってSOSする? 662 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 19 07 14.51 ID /ityZHeq0 涼宮ハルヒの憂鬱 高校の国語教師でもあるハルヒ(26歳)が主人公。ゆとり教育によって荒廃した教育現場が舞台。 無気力(無関心)でぶつぶつと独り言や奇行を繰り返す男子生徒キョンや、 父親からの性的暴力によって心を病み、援助交際にふけるみくる、 自閉症で、やや虚言癖がある長門ゆき。 現代社会が抱える闇を浮き彫りにし、これら問題ある生徒たちに対して ハルヒが体を張ってぶつかっていき、共に解決していくことで人間的にも成長していく物語。 667 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 19 12 33.68 ID /ityZHeq0 662 書いてて思ったが、ごくせんかGTOとか金パチ先生とかこんなんかな? 実は全部見たことwww 690 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 21 09 46.32 ID OvnsEnhz0 667 金八の場合 妊娠した女子生徒 優等生の仮面をかぶった学級の裏ボス 性同一性障害の女子生徒 殺人犯の子 などの濃いメンツが勢ぞろい 807 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 00 12 35.04 ID FWg895+yO ハルヒ 普通の高校生活 修学旅行とかやってそう 809 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 00 28 46.78 ID bY+NeWAb0 ハルヒ うららかな春の日に、ボクは彼女と出会い恋をしました。 こそばゆい恋愛アドベンチャー、今春発売。 811 名前:全部繋げてみた[] 投稿日:2008/05/01(木) 00 53 27.60 ID weD9CH8N0 高校の国語教師でもあるハルヒ(26歳)が主人公。 ゆとり教育によって荒廃した教育現場が舞台。 無気力(無関心)でぶつぶつと独り言や奇行を繰り返す男子生徒キョンや、 父親からの性的暴力によって心を病み、援助交際にふけるみくる、 自閉症で、やや虚言癖がある長門ゆき。 現代社会が抱える闇を浮き彫りにし、これら問題ある生徒たちに対して ハルヒが体を張ってぶつかっていき、共に解決していくことで人間的にも成長していく物語。 ちなみに主人公涼宮ハルヒは11歳の女の子。 修学旅行とかやりつつ普通の高校生活を送るが、 体は女心は男の葛藤の毎日に嫌気がさしてきた冬、男に恋をしてしまう。 体は女なのだから正常に思われるが心は男、 何と切り出せば良いのか分からずに悶々と過ぎ行く日々を綴るラブストーリー。 ほれた男子にハルヒは精神的な持病によってアプローチすることができない。 だが、変な奴らを集めてじょじょに接近していく。 しかし、ハルヒはいじめられまくって憂鬱になってしまう。 それを見かねた友達がSOS団を立ち上げ、いろいろあって ハルヒはだんだん元気になる。 馬鹿なクラスメイトに辟易しながらも日々の日常を贈る 厨二病の少女を主人公にした風刺の強い青春群像ドラマ。 うららかな春の日に、ボクは彼女と出会い恋をしました。 こそばゆい恋愛アドベンチャー、今春発売。 861 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 09 37 32.25 ID QDMJUxLmO 【涼宮ハルヒの憂鬱】 最初朝倉さんが好きだったキョンは涼宮さんの助力を得て、 朝倉さんと付き合えることになったけど、 そのうちキョンは朝倉さんより、涼宮さんのほうが良いと言い出して まんざらでもない涼宮さんはなんとなくOKして 涼宮さんはキョンを受け入れてしまいます。 キョンと涼宮さんはそろって朝倉さんをシカト どんどん壊れていく朝倉さん。 そのうちに涼宮さんが妊娠したとか言い始め 涼宮さんがうざくなるキョン キョンは涼宮さんをほっぱらかして、学友の長門さんや朝比奈さんや、 あまつさえ自分の妹とも関係を持っていきます。 ついに、キョンは狂った涼宮さんに刺し殺されてしまいました。 そしてその後、涼宮さんは、朝倉さんに腹を裂かれて殺されてしまうのです。 「中に誰もいませんよ」 朝倉さんは切り取ったキョンの頭を胸に抱いて ついに一緒になれましたとさ。 おしまい 666 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/04/30(水) 19 11 15.15 ID 9VU3H/UeO 涼宮ハルビンの憂鬱 とある中国のハルビンという少女が餃子拳を会得し戦い続けるバトルマンガ 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 16 50 00.26 ID 2ko/FyiEO ハルヒがでるやつ なんかロリな女がたくさん戯れて歌を歌いまくり男をたぶらかす作品。多分へんな髪色のやつがいっぱい出ると思う。 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 16 51 19.07 ID 08L2KDL3O 14 みたいな 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 19 28 20.33 ID 6NbFjDI40 絶対 内容知ってるのに ワザと変な妄想してる奴いるだろ 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 19 32 05.17 ID xZPLM/4mO 40 ハルヒなら見た事あるけど、想像とかなり違っててびっくりしました。 86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/05/01(木) 23 13 02.27 ID gYtCKwg7O ハルヒの憂鬱 中2のハルヒという名前の女のやる気が究極になく、何をするにもネガティブ もうクソ暗い漫画
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キョン「なぁ、しょっぱなの自己紹介のアレ、どのあたりまで本気だったんだ?」 ハルヒ「『しょっぱなのアレ』って何?」 キョン「いや、だから宇宙人がどうとか」 ハルヒ「あんた宇宙人なの?」 キョン「んなわけねえだろ!!お前のその自己紹介のせいで誰一人俺の自己紹介を覚えてねえんだよ! 俺より目立ちやがって!絶対ゆるさん!」 いきなり怒鳴られた、後から聞いた話によると。 キョンは目立ちたがり屋で、しかも極度の負けず嫌いらしい。 それからというものの、キョンはアタシのすることにいちいち突っかかってくるようになった。 こうしてアタシとキョンは出会ってしまった。 ある日、次の時間は体育で着替えなければならないというのにクラスの男子はなかなか教室から出て行かなかった。 アタシはかまわず男子達の目の前でセーラー服を脱いでやった、すると女子の「キャー」悲鳴と供に一目散に教室から出て行った。 だけどキョンはそこに居た。「俺にもできるぜ?」みたいな顔をして女子の目の前でパンツ一丁になったのだ。 「キャー」という悲鳴と供に女子は一目散に教室から出て行った。 アタシは無視してスカートを脱いだ、 するとキョンは得意気な顔をしてパンツを脱いだ。 キョン「どうよ?」 ハルヒ「どうって…体操着に着替えるのにパンツを脱ぐ必要は無いんじゃないの?」 キョン「お、俺はいつもこうなんだよ!」 そういってキョンは下着をつけずに短パンを履いた。 谷口「おい、キョン。横チン出てるぞ」 キョン「お、俺はいつもこうなんだよ!」 その日の体育で女子の注目の的になったのはブッチギリでキョンとその息子だった。 アタシは何かおもしろいものでも無いかと全ての部活に仮入部してみた。 どうやらキョンも負けじと全ての部活に仮入部していたらしい。 キョン「どうだ?どこか楽しそうな部活はあったか?」 ハルヒ「全然無い。これだけあれば少しは変なクラブがあると思ったのに」 キョン「無いものはしょうがないだろ、結局の所、人間はそこにあるもので満足しなければならないのさ。言うなれば…」 なんかうんちくを語りだした、知的なところをアピールしてるんだろうか。 次の瞬間アタシはひらめいた。 ハルヒ「そうだ!無いなら作ればいいのよ!どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのかしら」 キョン「まぁ俺は最初から気付いてたけどね」 そんなこんなでなぜかアタシとキョンは一緒に新しい部活を作ることになった、 そして潰れかけの文芸部室を乗っ取ることに決めた。 放課後。アタシは2年の教室でぼんやりしていた娘を捕まえて部室へ向かった。 ハルヒ「ごめんごめん遅れちゃって、紹介するわ!朝比奈みくるちゃんよ!」 アタシは得意げにみくるちゃんを紹介した。 しかし、キョンも新入部員を連れてきていた。 古泉「はじめまして、古泉一樹です」 キョン「どうやら俺の連れてきた部員のほうが優秀そうだな」 キョンは勝ち誇った顔で言う、アタシはちょっとムッした、 ハルヒ「見なさいよ!メチャメチャ可愛いでしょ!?萌えって結構重要な要素だと思うわ」 キョン「なんの!古泉もイケメンじゃないか!これだけのいい男はなかなか居ないぜ?」 ハルヒ「それだけじゃないわ!ほら!アタシより胸でかいのよ!ロリで巨乳!完璧じゃない!」 アタシはみくるちゃんの胸をモミながらそう言った みくる「ひぇ~っやめてくださぁ~いっ」 キョン「なんの!どうだ古泉の奴けっこうでかいんだぜ?ほら」 なんとキョンは古泉のイチモツをモミだした 古泉「な、なにをするんですか!?」 キョン「ほ~らドンドン大きくなってきた、まだまだでかくなるぞ~」 古泉「ああっ!はうっ!ううっ!」 キョン「どうだすごいだろうハルヒも触ってみるか?」 古泉「あぁぁっ!」 ハルヒ「わかったわ!アタシの負けよ!やめなさい!」 アタシは暴走するキョンを必死で止めた。 古泉「ハァハァ、ありがとうございます、涼宮さん」 変な声を出すな、息を荒げるな、頬が赤いんだよ気持ち悪い。 こうしてアタシ達の部活はできあがった。 ハルヒ「みんなー!野球大会に出るわよ!」 部活を新設して以来なんのイベントもなく退屈だったので アタシは草野球大会の申し込みをしてきた。 キョン「出るからには優勝するぞ!」 ハルヒ「あたりまえじゃない!」 嫌そうな顔をする他の部員を他所に、アタシとキョンは大乗り気。 野球大会の参加が決定した。 試合当日、初戦の相手は上ヶ原パイレーツ、どうやら優勝候補らしい。 でも楽勝ね。今日はキョンも味方だし。 キョンはどうしても4番サードがいいらしくアタシは1番でピッチャーになった 「プレイボール」 試合が始まった、先攻はSOS団 アタシは初球を2塁打にした、ちょろいもんね。 だけど続くみくるちゃんとユキは見逃し三球三振、そしてキョンの打順がきた。 ハルヒ「キョーン!あんたは打たなきゃ死刑だからね!!」 キョン「誰に言ってるんだ?お前が2塁打なら俺はホームランだ!」 結果は…三球三振。どうやら負けず嫌いだけど実力は無いらしい。 キョンは今までに見たこと無いくらいに悔しがっていた。 すると古泉君がアタシに言ってきた。 古泉「まずいですね、今までに無い大規模な閉鎖空間が現れました」 どうやら古泉君の話によるとキョンは負け始めると閉鎖空間とやらを生み出し そこで暴れまわるらしい、しかもその閉鎖空間が広がりきると世界が終わるとか何とか。 なんて迷惑で自分勝手な…。超常現象マニアのアタシはあっさりその話を信じた。 結局アタシ以外ヒットを打つこともなく打者が一巡した。 その間、マリーンズにはバカスカ点を取られる始末。このままじゃ世界が… 古泉「大丈夫、僕と長門さんに彼にホームランを打たす秘策があります」 古泉君には何か作戦があるらしい。私も秘策を出すことにした。 アタシとみくるちゃんとユキはチアガール姿になって打席に立った。 マリーンズ投手はその姿に動揺してすっぽぬけた球を投げてきた。 結果は三塁打!みくるちゃん、ユキは四球で出塁、満塁の大チャンスとなった。 チアガール作戦は効果テキメンね!!そして2アウト満塁でキョンの打順となった。 古泉「ここで秘策の出番ですね、長門さん」 ユキはバットに何か呪文を唱えてキョンに渡そうとした。 だけどキョンは真っ直ぐ打席には向かわなかった。 キョン「そうか…!おもいついたぞ!ちょっとタイム!」 なんとキョンは例のノーパン体操着に着替えて打席に立った。 隙間から2本目の肉バットをぶら下げて…。 こうしてアタシ達は1回戦で出場停止処分となった。 試合後、キョンはマリーンズの主将と何か話していた。 主将「いい試合だったな、ところでそのバットだが…」 主将は頬を染めながらキョンの2本目のバットを見た。 そして2人は奥へと消えて言った。 「アーッ!アーッ!」 奥から主将の声がいつまでも響いていた。 キョンは帰りにファミレスを奢ってくれた。思わぬ臨時収入があったらしい。 閉鎖空間もキョンの何らか征服感により消滅したらしい。 なにはともあれメデタシメデタシね! キョン「おい!ハルヒ!起きろ!起きろったら!」 キョンの声で目が覚めたアタシは目を疑った。 一面灰色の世界の学校にアタシは居た、たしか家でベットで寝てたはず。 一体何があったの??? キョン「わからない、起きたらなぜかここにいて、隣にお前が寝てたんだ」 学校の周りを調べたがどうやら学校の外には出れないらしい、 とりあえず部室に行くことにした。 キョン「俺が先だ!」 キョンは走って部室に向かった、こんな時まで負けず嫌いな奴ね…。 1人で部室にまで歩いていると、そこへ人型の光が現れた 「やぁ涼宮さん、僕です古泉です。」 ハルヒ「古泉君!一体これはどういうことなの?」 古泉「どうやらここは彼の閉鎖空間の中のようです。どうやら涼宮さんには敵わないと思い始めたことにより作り出されたものでしょう」 ハルヒ「どうすればいいのよ!このままキョンと2人でここで暮らさなきゃいけないわけ!?」 古泉「白雪姫という物語を知ってますか?アレを思い出してください 僕はこれ以上ここにいることは出来ないようですね。では…」 そういって古泉君は消えていった。 白雪姫…ってあの童話の?キスでもすれば戻れるとでもいうのかしら… アタシはキョンの待つ部室へ行った。 キョン「遅かったな」 ハルヒ「キョン…アタシ実は巨根萌えなの」 キョン「はぁ?」 ハルヒ「いつだったか、あんたの短パンからハミ出した肉棒 反則的なほど大きかったわ」 そういってアタシはキョンにそっとキスをした。 キョンは負けじと舌を入れてきた、なんて負けず嫌い、 アタシはキョンの上着を剥ぎ取り体に舌を這わせた。 キョンは負けじとアタシを押し倒し挿入動作に入った。 ハルヒ「あいたたたたっ!無理無理そんな大きいの入らないって 痛いっ!わかったアタシの負け!やめてやめて!」 キョンはふと勝ち誇った顔をした。 …次の瞬間、アタシは自分の部屋のベットに居た。 我ながらなんていう夢を…。 次の日、寝不足の目を擦って学校へいくと キョンはノーパン短パンで席に座ってた。 自慢の息子をはみ出しながら キョン「俺の勝ちだな」 終わり
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ある日、俺は本屋に行った。高校生になったことだし本を読み始めてみようかと思ったからである。まぁビギナーなので今回はラノベにするのだが・・・。そこで一冊の本と出会った 「『涼宮ハルヒの憂鬱ってタイトルか・・・』ってタイトルか、なんじゃそりゃ?」 ペラペラっと本を捲ってみると主人公は俺と同じあだ名で、登場人物は俺の知り合いと同姓同名ばかり なんか良くない予感を感じがしたがとりあえず買ってみることにした 家に帰ってさっそく本を読み始める キョン妹「キョン君ごはんだよー!」 「俺はあとで食うよ」 キョン妹「キョン君お腹痛いの?」 「いや、ちょっと忙しいんだ」 キョン妹「ふーん、ハンバーグなくなっちゃっても知らないよー?」 「俺の分も食っていいぞ」 キョン妹「・・・・変なキョン君~」 夕食どころじゃねぇよ、なんだこの胸糞悪い話は・・・・ 読み始めて3時間くらいで読み終えた、内容をまとめると 俺と同じあだ名の主人公は中3の冬に「涼宮ハルヒの憂鬱」って本を見つける。その「涼宮ハルヒの憂鬱」って本も登場人物は俺の知り合いと同姓同名ばかり。その本は気晴らしで読んだ1冊で終わるはずだったのだが、主人公は高校入学するとその本と同じような出来事が頻発してすぐにその本はこれから始まる自分の高校生活を著したものだと知る。主人公はその奇怪な状況に浮かれ、自分を「予知能力者」と設定しハメをはずした行動をする。主人公の周りはその本に忠実なのだが、主人公はその本とはまったく違う行動をするのだ。そしてその本と現実のズレが大きくなり最後には世界が滅亡してしまう というものだ。 なぜ世界が滅亡してしまうかということを説明しよう 「涼宮ハルヒの憂鬱ってタイトルか・・・」のヒロインも作中の「涼宮ハルヒの憂鬱」のヒロインも俺の良く知る涼宮ハルヒと同じく神様だ 俺の推測だが「涼宮ハルヒの憂鬱」の物語の展開は、俺がハルヒと出会ってから俺が閉鎖空間でハルヒとキスして世界を救うあの消えてほしい記憶までとまったく同じだ そして「涼宮ハルヒの憂鬱ってタイトルか・・・」の主人公は自称「予知能力」でデリカシーのない質問とかしまくってハルヒに嫌われちまうらしい そうするとハルヒに閉鎖空間に一緒に行くことを願われず、ハルヒにキスする人物がいなくなってしまったため世界が崩壊してしまったらしい 俺ではないはずなのにすごく恥ずかしくなってきた。てか「涼宮ハルヒの憂鬱」ってマジで俺たちの日々じゃねぇか、こんな偶然あるわけない。明日長門とか古泉とか朝比奈さんに聞いてみよう。それと、ハルヒには知られないようにしないと 次の日の部活、幸いにもまだハルヒはきていない 「この本を見てくれ」 古泉「おや、あなたが本を持ってくるとは珍しいですね」 「んなことはどうでもいい、とりあえずペラペラとめくってくれ」 古泉「んふっ、わかりました」 「長門と朝比奈さんも一緒に」 みくる「わかりました」 長門「わかった」 古泉「これは・・・」 みくる「これ私じゃないですか!」 長門「・・・・・」 「ただの本じゃないだろ?詳細はスレの最初を読んでくれ」 古泉「ん~・・・涼宮さんが望んだのでしょうか?」 「こんな偶然あるわけないだろ」 長門「涼宮ハルヒによるものではない、彼女は狂ったあなたも自分の伝記も望んでいない。」 みくる「情報統合思念体の情報操作でもないんですね?」 長門「ない」 古泉「では、まったくの偶然と考えたほうが得策ですね。これ以上考えても答えが見つかるものではありません。」 「でもなぁ・・・」 古泉「とりあえず、このことは涼宮さんには内密に。こんなに現実とシンクロした本を読んでしまって我々の正体は本の中と同じで、自分には力があると信じてしまったら大変ですからね。それはもう知っていると同義ですから。」 みくる「涼宮さんもそろそろ来るでしょうし、この話は今はここまでということで・・・」 「わかりました。」 みくる「あ、そういえば茶葉を切らしていたので買いに行ってきますね」 「行ってらっしゃい、朝比奈さん」 バタン 古泉「ではいつものようにオセロでもしましょうか」 「その前に俺トイレ行っていいか?」 古泉「それなら僕もご一緒しますよ」 「なんでだよ?」 古泉「んふっ、友情を深めようと思いまして」 「顔が近いんだよ気持ち悪い」 古泉「失礼しました」 「じゃ~長門、俺たちがトイレに行ってる間にハルヒが来たらよろしくな」 長門「わかった」 ハルヒ「遅れてゴメンね!!ってあれ?有希だけ?」 長門「・・・・」コク ハルヒ「まったく、どこで油売ってんのよ・・・ん?この本なに?」 長門「それは読んではいけない」 ハルヒ「どうして?」 長門「とにかく読んではいけない」 ハルヒ「読むなって言われると余計に読みたくなってきたわ!」ペラペラ 長門「あ・・・」 ハルヒ「お、私と同姓同名なんて珍しいわね・・・ん?キョンも? てか、私の知り合いと同姓同名ばっかりじゃない!」 長門「単なる偶然」 ハルヒ「そ、そう?まぁ有希がそういうならそうよね」 ペラペラ ハルヒ「ぶひゃひゃひゃひゃひゃwwwwwwなにこのキョンすんごいキモいしウザいwwwwww実際にこんなことやったら蹴り飛ばしてやるわよ」 長門「・・・・・」 ハルヒ「攻略本持ってるくせになにが予知能力者よwwwwww」 ガチャ 「お、ハルヒ来てたのか・・・ってなんでその本読んでる!?」 ハルヒ「これあんたの?すんごい傑作だわwwwww」 「返せ!」バシッ ハルヒ「ちょっとなにすんのよ!まだ最初のほうしか読んでないのよ!」 「これは読んじゃダメだ!」 ハルヒ「どうして?」 「うっ・・・・実は・・・これ官能小説なんだ!!!」 ハルヒ「はぁ?」 「こ、古泉は母子家庭監禁レイプものが好きらしくてな、その本は俺が古泉に紹介してやったんだ。だからお前は読んではいかん!」 古泉「ちょwwwwwww」 ハルヒ「そ、そんなものを神聖なる部室に持ってこないでよ!!」 「お、俺たちは健全な男子高校生だ!!さっきだって部室に俺と古泉と長門の3人しかいないとき2対1の妄想したんだぞ!!親友とエロトークして何が悪い!?」 長門「・・・・・・」 ハルヒ「わ、わかったわよ、うるさい」 古泉「す、涼宮さん・・・そういうことなので・・・」 ハルヒ「ひっ!」ビクッ 古泉「・・・・・・」 ハルヒ「まぁいいわ、でもその主人公が歓喜するほどの高校生活ってどんなのかしら?気になるわ!よしきめた!あたし『涼宮ハルヒの憂鬱』を探してくる!」 「は?」 ハルヒ「『涼宮ハルヒの憂鬱ってタイトルか・・・』ってのがあるなら、『涼宮ハルヒの憂鬱』もあるはずよ!」 ガチャ みくる「ただいま帰りました」 ハルヒ「お、みくるちゃん!来てそうそう悪いけどあたしこれから本探しに行くから!」 「おい!ちょっと待て!」 ハルヒ「じゃ~今日は解散!」 そう言うとハルヒは出ていった みくる「何かあったんですか?」 「あの本を読まれてしまいました・・・」 みくる「ふぇ!?ど、どうしましょう・・・」 長門「『涼宮ハルヒの憂鬱』はまだこの世にはない」 古泉「しかし彼女が望めば・・・ですよね長門さん?」 長門「・・・・・」 古泉「お願いですからひかないでください、こっちだって鬼畜ホモはさすがに辛いんです」 みくる「き、きちくほも!?」 古泉「もう!!キョン君のせいだからねっ!!」 「・・・・・・」 みくる「・・・・・」 長門「・・・・・・・」 古泉「何でもないです」 長門「とりあえずまだ大丈夫」 「じゃ~今日は解散か」 みくる「わかりました」 古泉「うひゃ!」 「ただいま」 キョン妹「おかえりキョン君!今日はご飯一緒に食べれる?」 「おう、昨日の夜の分も食べないとだからな」 キョン妹「やったー!」 しかしどうしようもねぇな、ハルヒのあの目は本気だ。もう発売は決定したようなもんじゃねぇか。ハルヒが本当の神様として仏壇に飾られるのも時間の問題だな キョン妹「今日はロールキャベツだって!」 「おいしそうだな」 妹よ、お兄ちゃんはもうすぐ神様の弟子になっちゃうかもしれない。そしたら精進しないとだから今日はおいしく食べような 次の日の教室 「涼宮ハルヒの憂鬱は見つかったか?」 ハルヒ「ふふ~ん、どうかしらねぇ~」 この様子だと見つかったのか・・・? 放課後の部室 古泉「今日の涼宮さんはどうでしたか?」 「なんか浮かれてるみたいだったぞ」 古泉「ということはまだ読んではいませんねぇ」 「どうしてそうわかる?」 古泉「他人に自分の人生を詳しく書かれるのは気持ちいいとは思えません」 「なるほど」 古泉「ところで母子家庭における内職は刺身のタンポポ作りが(ry」 ハルヒ「お待たせ!!今日はみんなに大ニュースよ!」 「やっぱ見つかったのか?」 ハルヒ「『涼宮ハルヒの憂鬱』は一週間後に発売らしいわよ!」 まだ手に入れてないか。よし、まだ一週間ある ハルヒ「もう楽しみで仕方ないわ!」 そしていつもの部活 長門「パタン」 ハルヒ「今日は解散!」 ハルヒが帰った後、俺たちは残って対策を練った 「一週間でなにができる?」 古泉「涼宮さんの興味を失わせるにしても説得できるような口述はありませんね。ネタバレは本の内容からして使えないですし・・・」 長門「私はもう手を打った」 古泉「ほう・・・なんですか?」 長門「角川書店に発売中止を求める脅迫文書を差出人不明で2万4536通送った」 みくる「ふぇ~長門さんさすがです」 「しかし規模こそは大きいが、ただのいたずらとして処理されちまうんじゃねぇか?」 長門「大丈夫、脅迫に信憑性を持たせることに成功した」 「どうやって?」 長門「日本の大手出版企業および印刷業者の倉庫全部に火を放った。情報操作により報道される可能性はない、安心して」 「ちょwwwww5日後に俺の生きがいであるCOMIC LO発売なのにwwww」 みくる「こみっくえるおーってなんですか?」 「いや、なんでもないです」 古泉「うほーいwwwwwキョン君、個人的には10歳~12歳が(ry」 「まぁ、これで発売に支障をきたすだろう」 しかし俺はハルヒを侮っていた 次の日の部活 ハルヒ「またまた大ニュースよ!!『涼宮ハルヒの憂鬱』の発売が明日になったの!土曜日だから朝一番でいっちゃうわよ!」 なん・・・だと・・・? 「古泉、これは予想外だぞ」ヒソヒソ 古泉「ええ、しかし本はすべて焼き払いましたし・・・」ヒソヒソ 「でも、発売決定ってことは在庫があるんじゃないのか?」ヒソヒソ 古泉「これも涼宮さんの力・・・」ヒソヒソ ハルヒ「ん?私がどうかしたの?」 「そうだよなぁ!古泉、スク水は肩の部分が細くて肩甲骨が見えるのが最高だよな~ははははwwwww」 古泉「いや、個人的には小4あたりの子が見栄はってブラつけちゃうほうが最高ですよwwwwwまったいらなのに胸をはっちゃうとかwwwwwそのプライドを崩してみたいです!!」 「・・・・・・」 ハルヒ「・・・・・・」 みくる「・・・・・・・」 長門「・・・・・・」 古泉「あれれぇ~?」 そして今日もいつもの部活 長門「パタン」 ハルヒ「今日は解散!」 「やっぱハルヒの力なのか?」 長門「おそらく」 みくる「でも、本は焼いちゃったはずです」 長門「私が情報操作で火を放ったのは昨日の午後4時37分、しかし発売予定日が明日になったため書籍の出荷が昨日の午後12時から始まったことにされた」 「ってことはまさか・・・」 長門「4時間と30分の間にかなりの量の本が出荷された」 みくる「ふぇぇぇ~」 古泉「どうやら水際で止めるしかなさそうですね、集積所を一ヶ所一ヶ所、トラックを一台一台炎上させるよりは我々の周辺の書店に的を絞って入荷してから阻止すべきだと」 「なぁ、出荷が早まったならLOも無事か?」 長門「その書籍の発売予定日は変わらないはず」 「そうか・・・・」 みくる「でも火は危ないですよ、書店は人が多いところにあるのですし」 「だったら売れる前に全部買うってのは?」 長門「北口駅の半径2km以内には書店が13店舗ある」 みくる「それにお金が・・・・」 「う・・・」 古泉「では涼宮さんに尾行をつけて涼宮さんがいこうとしている書店を割り出し、購入班に連絡する。そして購入班は書店に先回りし、本を買い占める。お金は機関の予算から出します。世界の存続がかかっているので・・・」 「尾行は誰がやるんだ?」 古泉「機関の人間にやってもらいます。そのほうが何かと融通がきくでしょう」 みくる「涼宮さんが誰かから借りるって可能性は?」 長門「可能性は0に等しい。涼宮ハルヒとその間柄にいる人物は極めて少ない」 古泉「とにかくやるだけやってみましょう」 次の日の午前8時、北口駅前 古泉「おや、今日は遅刻しないのですね?」 「そりゃぁ世界を背負ってんだからな」 みくる「でもさすがにまだ早いんじゃないですか?」 長門「古泉一樹、涼宮ハルヒの様子は?」 古泉「今、聞いてみます」 古泉『森さん、聞こえますか?』 森「聞こえているわ、まったく朝っぱらからどうしてこんなことしなきゃなのよ」 古泉『世界のためです、涼宮さんの様子は?』 森「今は朝食を摂っている」 古泉『そうですか、ではなにか動きがあったらよろしくお願いします』 ピッ 森「まったくなんで部下にこき使われなきゃなのよ」 古泉「涼宮さんはまだ朝食のようです」 「そうか、まだ時間があるか・・・」 午前8時30分 Prrrr 古泉「はい」 森『古泉、涼宮ハルヒが外出した』 古泉「わかりました、尾行を続けてください」 森『涼宮ハルヒは北口駅と反対の方向に向かっているわ』 古泉「そっちの方向には書店はないはずですが」 ビラ配り「よろしくお願いします」 みくる「ふぇ?ああっ!」 「朝比奈さんどうしましたか?」 みくる「このチラシ・・・」 「嘘だろ!?ハルヒの家の近くに本日TSUTAYAがオープンだと!?」 長門「おそらくは涼宮ハルヒが望んだもの」 「古泉!」 古泉「森さん、涼宮さんは今日オープンする近所のTSUTAYAに向かいます。我々では間に合いません。阻止してください。そこさえ阻止すれば涼宮さんは北口駅に来ざるをえないはずです」 森『でも私は今日そんなに金を持っていないわよ!』 古泉「マッチがあるじゃないですか」 森『わかったわ・・・身元引受人を準備しといて』 古泉「ご武運を祈ります」 森「冗談じゃないわ。古泉、これは重大なミスよ。あとでおしおきしてあげる」 9時TSUTAYAオープン 森「走れば間に合う!ラノベコーナーは・・・・あった!」 チッ、シュボッ 客「わぁぁぁぁ!!!何してんだよ!!」 客「店員呼べ店員を!!」 森「がたがた騒ぐんじゃないわよ!世界がかかってるのよ!!」 客「キャー!!」 森「はやく燃え尽きろ!はやく!消火器がきちゃう!」 パチパチッ 森「よし!」 店員「お客さん、ちょっと裏のほうまで・・・」 森「はい・・・」 森「古泉・・・私上手くやったわ・・・」 古泉『ありがとうございます』 森「戻ったらおしおきだからね・・・」 ハルヒ「開店早々ボヤ騒ぎなんて不運な店ね・・・仕方ないわ、北口駅前まで行かなくちゃ」 古泉「森さんがTSUTAYAを阻止しましたがこれから涼宮さんは単独です。しかし涼宮さんが来るまでまだ時間があります。その間に北駅口駅前の書店のうちで「涼宮ハルヒの憂鬱」を入荷したとみられる4店舗を片付けておきましょう。おそらくこの4店舗巡ってもなかったらあきらめるでしょう。」 紀伊国屋書店 「すいません!この本の在庫ありったけ下さい!」 店員「は、はい!」 みくる「ふぇ、重いです・・・」 古泉「まだ一店舗目ですよ」 長門「・・・・」ヒョイッ 八重州ブックセンター みくる「す、すいません!こ、この本をあるだけくださーい!」 「2店舗目でこの重さかよ・・・」 古泉「まだ半分です」 長門「・・・・」ヒョイッ ジュンク堂書店 古泉「この本をありったけください」 「おわっ!」 みくる「ぬぉぉぉぉぉ!」 長門「・・・・・」ヒョイッ 未来屋書店 長門「この本を全て」 みくる「おらよっと!」 古泉「さすがにキツイですね」 「ああ・・・・・」 北口駅構内 ハルヒ「なんでどこもないのよ、まだ午後11時なのにどこも売り切れてるなんて・・・。 そんなに注目されてる作品なのかしら?もう帰ろう・・・」 鶴屋さん「あれぇ~?そこにいるのはハルにゃんじゃないかっ!」 ハルヒ「あ、鶴屋さん!って朝帰り!?」 鶴屋さん「まぁ、そんなとこだねっ!」 ハルヒ「へ、へぇ・・・」 鶴屋さん「いや~楽しかった!親戚のチビッ子たちはもうめがっさ元気さっ!」 ハルヒ「あ~そういうことね・・・・」 鶴屋さん「ところで隣の市の本屋でおもしろい本見つけたさっ!これ登場人物がハルにゃんとかキョンくんとかと名前が同じでめがっさ似ているにょろ!」 ハルヒ「!!鶴屋さん、これ貸して!」 鶴屋さん「へ?べつにかまわないさっ!」 ハルヒ「ありがとう!それじゃバイバイ!」 鶴屋さん「ハルにゃんはあいかわらず元気だにょろ」 駅前 古泉「本の回収後、僕が駅前の様子を伺っていると涼宮さんは我々が本の回収を終えた10分後に駅前に現れ、我々が本を回収した4店の書店を巡って何も購入せずに駅に入っていきました」 「ついにやったな・・・」 古泉「はい、これで世界は救われました。在庫はおそらく当分はないでしょう。あと我々が回収した本は機関のほうで処分します」 みくる「でも涼宮さんの力で在庫が増えたりはしないんですかね?」 長門「今のところそのような動きはない」 「まぁハルヒも高校生なんだし我慢くらいできるだろ」 古泉「では今日は解散しましょう、お疲れ様でした」 みくる「お疲れ様でした」 長門「おつかれ」 「おつかれさま」 「ただいま」 キョン妹「おかえり!お昼ごはん食べた?」 「いや、今日はまだだ」 キョン妹「じゃ~一緒に食べよう!」 「おう、食べるぞ!」 こうして俺はまた家族とおいしくものを食べられる。今日の昼食は休日だけあって手抜きだが格別においしく感じられる。明後日の学校もきっと平和なんだろうな 月曜日の学校、今日のハルヒはやはり不機嫌なようだ 「本は手に入ったか?」 ハルヒ「手に入れたわよ」 なんですと!? 「ど、どうやってだ?」 ハルヒ「買いにいったらどこも売り切れていたんだけど、鶴屋さんとばったりあったら本を貸してくれたの。隣の市で買ったらしいわ」 それはどうしようもないなぁ・・・お手上げだ。ハルヒ神様誕生おめでとう 「本はもう読んだのか?」 ハルヒ「読んだわよ」 「どうだった?」 ハルヒ「ダメね・・・あんなに現実離れした話があるわけないわ。確かに登場人物は私たちと同姓同名で似てていてやっていることも同じようだけど、所詮は空想の世界よ。」 「ほう・・・」 あれ? ハルヒ「だって古泉君が超能力者で謎の組織に所属していていつかあたしが見た夢にでてきたような巨人と戦っているわけないじゃない。しかもその巨人はあたしの欲求不満の表れだとか・・・私もそこまで子供じゃないわよ」 そっか・・・俺たちの中では当たり前になっていることは一切ハルヒには見えないんだったな ハルヒ「みくるちゃんが未来人で時間を遡って私を監視しているわけないじゃない。どう見ても魔法少女って言われたほうが信じたくなるわ」 まぁそうだが、現実なんだよ・・・ ハルヒ「有希が宇宙人?宇宙人ならあたしたちもう食べられてるわ。読書好きな文学少女タイプの宇宙人なんてどこの秋葉原よ?あんな華奢な体で特殊能力とか使ったら体が壊れるじゃない」 俺はその華奢な少女に何回も助けられたか弱い男なんだが ハルヒ「そしてあたし、あたしの望みがいつも叶うならどうしてこの世界はもっとおもしろくならないの?」 いやもう十分叶ってますよ、知らないだけで・・・ 「お前はあの本の中に行きたいと思うか?」 ハルヒ「そうとは思わないわ。」 「でもこの世界は楽しくないんだろ?」 ハルヒ「あの本の世界のほうが楽しくなさそうよ、自分の身近な人たちは自分を監視するために自分の近くにいるなんて知ったらショックじゃない。あたしのひとつひとつの行動でギクシャクするのよ?」 何もいえない・・・ ハルヒ「でもあたしは宇宙人、未来人、超能力者を信じるわ」 「どうしてだ?」 ハルヒ「だってそのほうが楽しそうだからよ!」 結局それか 「そうか・・・そういえばなんでお前は不機嫌なんだ?」 今回の俺たちは骨折り損だったな・・・ハルヒは「涼宮ハルヒの憂鬱ってタイトルか・・・」の主人公のように要所要所が同じだとか、似ているだとかの理由で全てを知った気になるような人間ではない。ハルヒ自身は物事の真意を見たことないのにそうだと信じ込む愚かさを弁えている ハルヒ「だってあの本の中のあたしはキョンのことが好きみたいじゃない・・・」ボソッ 「へ?」 ハルヒ「なんでもないわよ!」 おわり
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第七章 俺たちは30分ほどで学校に着いた。 そしてやっぱり神人が暴れていて校舎もめちゃくちゃだったし、校庭には神人に投げ飛ばされたと見られる校舎の残骸が投げ捨てられていてこの世の風景とは思えないようだった。 ハルヒはもうどうしていいのかわからないようにこう言った。 「ねえ、キョン。いったい学校に来てどうするつもりなの?」 「わからん。とりあえず校庭のど真ん中に行こうと思う。」 ど真ん中とはお察しの通り俺とハルヒが昔キスをした場所だ。 そこに着けば恐らく何らかのアクションが起きるはずなのだ、そうでなければあの未来人や朝比奈さんが止めるはずである。 俺はハルヒを半分無理やりど真ん中に連れて行った。 そのとき、ポケットに入っていた金属棒が金色に柱のように光りだし、ハルヒと俺を光の中に入れた。何がどうなってるんだ。 俺は慌ててポケットから金属棒を取り出した。 これでハルヒが普通の人間に戻ったのか? もちろんそんなわけは無く、その金属棒にひびが入った。 ピキピキ…割れていく。 中から茶色い棒が出てきた。 俺の嫌な予感は的中し、金属棒の中からポッ○ーが… やはりそうか。 ポッ○ーゲームか、それでキスしろってのか。 ハルヒは察したのか俺からポッ○ーを奪い取り口に加えて目を閉じた。 俺も目をつむりポッ○ーをくわえたそのとき、前のときのような光が世界を包み俺たちを元の世界に返した。 たまたまグラウンドはどの部活も使用してはいなかった。 あれ?朝比奈さんやら古泉やら長門やらはどこに行ったんだ? 閉鎖空間に閉じ込められたのか?だとしたら神人が全部消滅するまで空間は消滅しないはずである。 だとしたら朝比奈さんたちはどうなる。 いやハルヒの能力が消えたのだから閉鎖空間も消滅したのか?古泉は何も言ってはいなかった。 その時、後ろで俺を呼ぶ声がした。 「キョン君!」 朝比奈さんである。あの未来人と(小)方もいる、気絶したまま(大)にかつがれてるが…。 「朝比奈さんたち、どうしてここに?」 「古泉君に言われたんです。学校に向かってくださいと。これも規定事項ですし。」 「そうですか。」 この時ハルヒがあることに気付いた。 「有希は?」 そうだ長門は?朝倉と交戦中のはずのやつはどこに言ったんだ。 その問いには朝比奈さんが答えた。 「長門さんはあと1分ほどでここに現れるはずです。朝倉さんって人を倒して。」 よかった。 じゃあ古泉はどうなったんだ。 まさかあのとんでも空間に閉じ込められたままなのか? 長門がやってきた、古泉の事を聞いてみる。 「古泉一樹は閉鎖空間に残り、自爆して全て倒すつもり。」 自爆?自爆ってあれか?ボーンってなって死んじまうあれか? 「そう。」 古泉はどうなるんだ。 「死ぬ。」 どうにかならないのか。 「ならない。そうしなければ世界が滅ぶ。古泉一樹は世界を守るために死を選んだ。」 くそっ、俺の許可なしで死にやがって。 ハルヒは悲しい顔で「私のせいよ、私が転校生が来て欲しいなんて思ったから。だから古泉君は…」 落ち着けハルヒ。お前は何も悪くないし古泉のことは悲しいが今はこの状況を何とかすることが先決だ。俺たちを助けてくれた古泉のためにもな。 長門。朝倉はどうなった。 長門はいつぞやのカマドウマのとき同様、校門を指を刺した。 「すぐそこ。すぐ倒す。もう余裕は無いはず。」 その直後、校門から高速で何かが走ってきた。勿論。朝倉である。 朝倉は長門めがけて突っ込んできた。 不謹慎かもしれんがターゲットが長門でよかった。 ターゲットが俺なら一瞬でことは終わっていたからな。 長門は校庭のど真ん中で戦闘をおっぱじめた。 轟音が鳴り響く。 轟音で朝比奈さんが目を覚ました。 「ふえ?ここどこですか?あれ?この人私にそっくり。誰なんですか?そっちの男の人も。古泉君はどこいったんですか?」 なんというか、どっから説明していいのか。 とりあえずここで目を覚ますのは朝比奈さん(大)にとって来てい事項なんだろうか。朝比奈さん(大)に目配せしてみる。 朝比奈さん(大)が頷いた。 俺はいまいち状況を理解できていない朝比奈さんに説明した。 「この人は今の朝比奈さんよりも未来から来た朝比奈さんです。恐らく今まで朝比奈さんに命令を出してたのもこの人です。」 「え?そんな、まさか。」やっぱりと言うかなんと言うか、やはり混乱した。一応孤島のときのこともあるので古泉のことは伏せておいた。 朝比奈さん(大)が口を開く「そうです、私は未来のあなたです、いろいろな指令をいつも出していたのも私です。それからキョン君、この騒動が終わったらこの子にこの子がするべきことを全て教えてあげてください。」 「え?わかりました。」どういう意味だろう。七夕のときや一週間後の朝比奈さんが来たときの手紙のことを教えてあげればいいのだろうか。 長門が交戦中にも関わらずこっちを向いて叫んだ。「ダメッ!!」 すると「確かに頼みましたよ。」といって朝比奈さんの後ろで盾になるように大の字になった。 その瞬間である。鉄砲か何か、もしかしたら光線銃のようなものかも知れない。 一線。 俺の盾となってくれた朝比奈さんは倒れた。飛んできたであろう方向からは何も見えない。 血まみれになって倒れた朝比奈さん(大)を支えてあげる。「これも規定事項ですから…」 そう言って朝比奈さんは目を閉じた。 俺はハルヒに叫んだ。「朝比奈さんに見せるな!!!」 ハルヒは急いで朝比奈さんに抱きつき視界をふさぐ。 だが何もかも遅い。朝比奈さんは泣きじゃくり倒れこんでしまった。 ここで突っ立って傍観していた未来の俺が地団駄を踏み口を開いた。 「まさか!クソっ!それで未来を守ったのか。クソっ!」 そうか。朝比奈さんが朝比奈さん(大)を認識することで現在と未来がつながったのか。 それなら俺と未来人の時でも同じことが言えるのだが恐らくハルヒが生み出した不安定な未来なので朝比奈さんが朝比奈さん(大)を認識することで上書きされたのか。 恐らくこの未来人の規定ではここで朝比奈さんが死に、朝比奈さん(大)の存在に矛盾を出すためだったのであろう。 と言うことは未来人戦はこちらの勝利である。大きな犠牲を払ったが。 とち狂ったように未来人が言った。「もうお前ら全員殺してやる。」 おいおい未来の俺よ。なに言ってやがんだ。 その時、突然空が無数の点により暗くなった。 なんだありゃ。いろいろありすぎてわけがわからん。 第八章
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涼宮ハルヒのゆううつ 妖魔夜行ver. の後書きです。(ネタばれしてますので注意) この物語は涼宮ハルヒの憂鬱がガープス妖魔夜行の世界観で成り立っていたなら、どんな世界が紡がれるのか、といいますか、ガープス妖魔夜行の世界と涼宮ハルヒの憂鬱は相性がいいのではないかと思い、書き始めたものです。 どこが違うの?と指摘があったように実際すごく相性はよかったということになります。普通のSSとは楽しみ方が違っちゃってますが、その辺は作者の趣味とご理解ください。 とりあえず、舞台となるガープス妖魔夜行について、少し説明が必要ですね。 妖魔夜行シリーズは、ハルヒと同じ角川スニーカー文庫を中心に展開されたライトノベルで、妖魔夜行(1991~2000年)と続編の百鬼夜翔(2000~2005年)が出版されています。 ストーリーの特徴は、SS内でも紹介した実在する『妖怪』をストーリーのメインに据えています。 重要なのは、この『妖怪』とは、 ・猫又、河童など一般的に妖怪と分類されるもの ・オーディン(北欧神話)、アテネ(ギリシア神話)など信仰される神々 ・人面犬、トイレの花子さんなど都市伝説 ・暴行された女性の怒りが実態化したヒューリー、理想の社会の歯車 妖怪サラリーマン など、人がその存在を信じる、もしくは、愛情・憎しみ・信仰など人の想いを反映して、『妖怪』が存在するという設定です。 そして、妖怪の強さは、主にそのことへの人の想いとその妖怪が生きてきた時間に影響されます。 したがって、最強の存在が本作の『あれ』となるわけです。 まあ、これ以下は超ネタばれですので、本編を読んだ後にどうぞ。 こんな作品ですが、ここまで読んでくれる人がいたなら、作者として感謝に絶えません。 敬具 では、超ネタばれキャラ設定をお話しますと・・・反転してますw 涼宮ハルヒ(人間) 3年前に滅びた最強の妖怪から力と呪いを受けた不幸な少女。キョンとの出会いは彼女にとって救いとなるのかな。 キョン(人間) 涼宮ハルヒと出会って『妖怪』の存在を知ることになり、いろいろと巻き込まれる本作の主人公。いいひと?「いい人って、神様みたいだね。感謝してよし、不満を言ってよし、いなくてもいい。」とはわたしは思わないんですけどね。 長門有希(文車妖妃) 妖怪団員そのいち。文章の妖怪である文車妖妃は妖魔夜行の東京での戦いで消滅しましたが、あまりにぴったりだったので、現代風にアレンジして復活。でも、3歳だからちょっと弱く、世間知らずなところあり。 百鬼夜行に登場する巨大ネットワーク『バロウズ』所属。バロウズの位置づけは、広域組織。(広域暴○団?) 朝比奈みくる(『禁則事項』) 妖怪団員そのに。でも、『禁則事項』で正体は『禁則事項』なのです。未来からきたのも本当。 妖怪タイムマシンもいずれ生まれることでしょうしねえ・・・ 古泉一樹(人間:微妙超能力者) 笑顔はくせですよ?超能力者ですが、ほとんどの場所で使えないという欠点あり。 原因は、SS読んでねw ちなみに、彼の『相棒』も妖魔夜行本編からの登場となりました。 ネットワーク『機関』所属。『機関』の位置づけは、日本政府直属の妖怪組織。 鶴屋さん(ちゅるや人形) 『鶴屋家』のリーダーだけど、鶴屋さんとちゅるやさんを同時に出したかったんですよ。 ちなみに、『鶴屋家』の位置づけは、妖怪的には地元集団。(地元○くざ?) 朝倉涼子(ミセリコルデ) ナイフの名前が決まった時点で、運命が変わっちゃったのは秘密。猟奇殺人犯が使っていたナイフに対する恐怖から暗殺を生業とする妖怪として誕生、生活している。 悪のネットワーク『ザ・ビースト』に力を貸してるけど、所属しているわけじゃない。 オリジナルな妖怪さんです。 サンダルフォン(天使) エヴァのあれが元ネタじゃなくて、ユダヤ教の天使の中で、妖魔夜行に登場せず、モーゼを導いたというメタトロンの兄弟で胎児の性別を決める天使。 つまり、誕生を司る天使という位置づけが気に入って採用。人間を見下しているのは、天使の特徴ですね。 『機関』メンバーズ 新川さん(幻の日本兵) フィリピンで日本兵発見というガセ情報があったのを思い出して、作ったオリジナル妖怪。 スネークはコードネームですよ?『機関』所属。 筒井さん(戦艦 大和) 名前だけ登場。戦艦の名前は地方名なので、その名前に由来する人物から。強さが三戦艦中二番目なのは秘密です。 坂本さん(戦艦 土佐) 名前も出てません。戦艦3人の中で一番強い人。これは、戦争中に日本の子供たちがあの土佐があったら・・・と思ったという話を聞いて決定。 廃墟で有名な軍艦島の名前の由来でもありますよ? 天城さん(戦艦 天城) 地震が大嫌いな戦艦3人衆で一番弱い人。関東大震災で壊れて処分されたのが原因なのでした。 UFO、ゼロ戦、カマイタチなどは正規の所属ではなく、お手伝い組です。 忘れてました。本SSの栄えある最初の妖怪さんに気づいた人は相当妖魔夜行に詳しい方のはずです。 キョンにお小遣いをあげた渡橋のおばさん・・・実はこの方は妖魔夜行本編にも登場する渡橋 八重さんという縁結び神社の大注連縄(おおしめなわ)という妖怪さんなのです ♪ 長くなっちゃうのでこのくらいにしますね ♪ 、
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「ねぇ、キョン。あんたポケモン持ってないの?」 近頃は最新型パソコンと睨めっこバトルをくり広げている団長様が、やおら話題をふってきた。まだまだ嵐の前のナンとやらを堪能していたい俺は、何をやらかすか分からんハルヒの目論見をできるだけけしかけないように答えた。 「あんな面倒なものは小四で卒業した」 「私、昨日ゲーム機ごと買ったんだけど……あんたもやらない?」 何故たった一言返しただけでここまで話が進むんだ?…まぁ、ゲームごときで深刻に考えるのもどうかしてるが、ハルヒはここ最近ネットばかりしているからなぁ 「昔は誰でもやったことあるわよね、どぉ?みんなで対戦とかやりたくない?」 「ふぇ~ゲームですかぁ…」 ゲームにまで手を出したら、今流行りのフリーター万歳人間になってしまうのではないか…仕方ない。ハルヒにこんな話をしても無駄だと思うが、たまには世界の平穏の為に働いてみるか 「…ハルヒぃ……こんな話を…知ってるかぁ?」 「な、何よ変なしゃべり方して」 「ポケモンシリーズの初代主人公は死んでいるらしい。」 「!!」 思った以上にリアクションがでかいな。気を悪くするなよ、お前の将来の為だ。 「し、知ってるわよ。金銀で話かけても『………』ってヤツでしょ?そんなんで死んでるって決め付けるなっ!!」 「マサラタウンの母親に聞くと、何か月も音信不通らしい。それに、ゴースト系のポケモンばかり出てくるしな」 「………。」 「これ以外にもポケモンには不気味な噂が沢山あるんだぞ?」 それでもやりたいか?…と言うのはまだ速いか。とりあえず、この意外と怖がりちゃんには精神的に死んでもらおう 「GBA版の伝説ポケモンで、レジアイス、レジスチル、レジロックっているだろ。」 「あれ、第二次世界大戦で死んだ障害者の権化らしい」 「ちょっと!!今日のあんたおかしいわよ、酷いじゃないッ!!」 「ホウエン地方って、九州がモデルだろ?」 レジアイスは長崎 レジスチルは宮崎 レジロックは大分 どれも原爆があった場所だ …朝比奈さん、泣かないで下さいよ。ハルヒの怪しい力でみんなにとばっちりがいかないように頑張ってるんだから 「ふぇ…」 ちなみに今呻きをあげたのは朝比奈さんではなく、団長様である 「奴らの祠にある文字は、病気の人用の『点字』だしな」 「…もう、止めた方がいい」 今から、森の洋館について話そうかと話を繋げようとする前に長門が教えてくれた。ハルヒが泣いてる。 「ふぇ…ふぇ…クスン」 萌えた。 「こんのバッカキョーンッ!!!買ったばかりなのにー!!もうできないじゃないのぉ……」 「ロトムってポケモンが―――」 「いやぁぁぁぁぁぁッ!!!」 古泉はニヤけているが、いいのか?閉鎖空間が発生しそうだか? 「おや、貴方はそんなつもりであんな話をしたのですか?」 「…スマン、まさか泣くとは思わなかった」 ハルヒは腰を抜かしたらしく、長門におぶってもらいながら坂を降る。怖がりすぎだ 「ゆきぃ…トイレ」 「ハルヒ、後ろにピカチュウが――」 「いやぁぁぁぁぁぁッ!!!」 失禁するなよ? ただでさえ、下校中の北高生に見られてるんだから。それにしてもお前がそんなに怖い話が苦手だなんて知らなかったよ 「今日の彼は a bully。私も苛められたい……」モミモミ 「ちょっと、有希。お尻揉まないでよーオシッコ出るぅ」 …ほら、貴方の後ろにもピカチュウが――
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とある喫茶店。 女二人が向かい合って座っている。 「悪いけれども、今日は、男性を相手にするときと同じ口調で話させてもらうよ。そうしないと、平静を維持できそうにもない。僕は、涼宮さんとは違って、強い人間ではないのでね」 佐々木の発言に、涼宮ハルヒは黙ってうなずいた。 「では、何から話そうか?」 「キョンのこと、どう思ってる?」 涼宮ハルヒの単刀直入な質問に、佐々木はあっさり答えた。 「好きだった。……うん、そう、過去形だよ。いや、現在進行形の部分が全くないといえば嘘にはなるだろうけど、もう、諦めはついている」 「なんで? フラれたわけでもないのに」 「告白すればフラれるのは明らかだ。キョンに異性間の友情という命題について肯定的な確信を抱かせてしまったのは、僕だからね。自業自得というやつさ。キョンにとって、僕は友人以外ではありえない」 「友情が恋愛感情に変わることだって……」 「キョンはそれをあっさり否定したよ。あれはいつものちょっとした世間話だった。今でもはっきり覚えてる。『友情が恋愛感情に変わるなんてありえん。そんなのは物語の世界だけだ』とね」 涼宮ハルヒは、複雑な表情を浮かべた。 「不安になってきたかな? その不安は正しいと思うね。このままじゃ、キョンと涼宮さんの関係も友人関係で確定してしまう。変えたいと思うなら、今すぐ行動することだ。今ならまだ間に合う」 「なんでそう言えるの? キョンは有希やみくるちゃんが好きかもしれないじゃない」 「それはないよ。長門さんも朝比奈さんも、恋愛については意識的に避けようとしている。キョンは他人のそういう態度には敏感だからね。ほとんど無意識的になんだろうけれども」 「でも……」 「キョンの長門さんに対する態度は、父性的な保護者のものだ。これは彼が妹持ちなことが影響してるのだろう」 「それはなんとなく分かるけど」 「そして、朝比奈さんに対しては、二律背反的な感情を抱えてるように思える。憧れと同時にどこか反感めいたものも感じるんだ。反感の原因は分からないけどね」 涼宮ハルヒは、唖然とした。 普段のキョンの態度から見て、朝比奈みくるに対して反感を抱いているなんてことは想像もつかなかったから。 「その二人に比べれば、涼宮さんは無条件で魅力的な女性だよ、キョンにとっては。キョンをこれほどまでに引き付けられたのは、初恋の従姉妹のお姉さんを除けば、涼宮さんが最初だと思う」 「佐々木さんだって、充分魅力的なんじゃないの?」 「世の男性の抱く感情の平均値でいえばそうである可能性も否定はできないかもしれない。しかし、この場合は、キョンにとってどうであるかが問題だ。僕はキョンの恋愛感情的な意味での好みを満たすものを持ち合わせていない」 「キョンの好みって、どんなのかしら? いまいちつかめないのよね」 「これは話に聞くところのキョンの初恋の相手から分析した結果だけどもね。退屈を感じさせる暇すらないほどにパワフルで笑顔のまぶしい女性。簡潔にいえば、そんなところだ」 佐々木は、紅茶のカップに口をつけた。 涼宮ハルヒは、テーブルの上の紅茶のカップに触れようともしない。 「佐々木さんは、本当に告白する気はないの?」 涼宮ハルヒは、にらむように佐々木を見た。 「ないね」 「なんで?」 「キョンははっきりと断って上で、それでもなお変わらぬ友情を維持してくれるだろう。でも、僕はそれに耐えられない。ならば、現状の友人関係を維持し続ける方がベターだ。最初にもいったとおり、僕は涼宮さんほど強い人間ではない」 「なら、私をけしかける理由は何なの? 告白してフラれてしまえばいいなんて思ってるわけ?」 佐々木は苦笑した。 「正直にいえば、そういうどす黒い気持ちもないわけではないよ。でも」 佐々木はここで一度言葉を区切った。苦笑が引っ込み、真剣な表情に変わる。 「これは何よりもキョンのためなんだ。僕にとって彼が大切な友人であることには変わりはない。彼には幸せになってほしいと思う」 涼宮ハルヒのにらみつけるような視線は変わらない。 佐々木は、それを確認してから、付け加えた。 「友情が恋愛に質的転換を遂げうるのは、キョンにとっては、涼宮さん以外に考えられないんだ。彼が今後、涼宮さん以上に魅力的な女性に出会う可能性はほとんどないだろうからね。この機会を逃せば、キョンは一生独身だよ」 「……」 「言っておくけど、キョンの方から告白してくるのを待つのは最悪の選択だ。彼は、異性間の友情に疑問を持ってないし、今の涼宮さんとの関係に不満があるわけでもない。彼が自ら積極的な変化を望む可能性は0だ」 「キョンって臆病者?」 「あながち外れてはないのかもしれないけど、より適切な言い方をすれば、恋愛感情は精神病という教義の熱心な隠れ信者なんだと思うよ。初恋が破れたときの経験がトラウマになってるのだろう」 佐々木は紅茶を飲み干した。 「僕から話せることはこれぐらいだ。あとは、涼宮さんの判断に任せるよ」 佐々木は、伝票をもって、席をたった。 涼宮ハルヒは、紅茶のカップをにらみながら、ずっと考え込んでいた。 やがて、意を決したように顔を上げると、携帯電話を取り出した。アドレス帳の一番上にある電話番号を呼び出す。 「いつもの喫茶店に集合。今から30秒以内。遅れたら罰金」 一方的にまくし立てて、通話を切る。 彼が来るまでの時間。それは、彼女にとって永遠に等しいぐらいの長さに感じられた。 終わり